はじめまして。ここ3年くらいほぼ下描きなしのペン画イラストしか描いてない斑尾と申します。
この記事は「いくら描いても絵に自信が持てない悩み」の解消法として、「下描きなしのペン画」の提案とその始め方を解説しています。
僕は数年前、絵の上達努力に疲れて心が折れかけていた時にペン画に出会いました。ペン画のおかげで今では、当時からそれほど画力が向上したわけでもないのに、自分の絵に自信が持てるようになり、前よりもずっと気楽に絵を描けるようになっています。
その経験から、「画力向上」だけが絵の自信を得る方法ではないのだと学びました。
もしあなたが、これまで「作品作り」や「練習」による上達努力を続けてきて、昔と比べればかなり画力は向上してるはずなのに絵に自信が持てない……そんな悩みを持っているのであれば、一度「下描きなしのペン画」を試してみることをオススメします。
ペン画のチューニング効果によって理想と実力のギャップが埋まり、長年の悩みが解消するはずです。
ペン画のススメ
下描きなしのペン画が「いくら描いても絵に自信を持てない悩み」の解消につながる理由は2つあります。
1.理想と実力のギャップ解消
まず絵に自信が持てない最大の要因は、いくら描いても「理想と実力のギャップ」が埋まらないことだと考えます。
多くの人はこのギャップを埋めようと「実力向上=画力向上」のための努力をするわけですけど、理想に果てはないので上達した分だけ目標値も上昇してしまいます。
だから過去の自分が目指した画力に到達できてもギャップは埋まらず、「アキレスと亀」のようなパラドックスに囚われてしまうのです。
そんな脱出不可能に思えるパラドックスをペン画は解消してくれます。
なぜならペン画には「描けないものは描けない」という絶対原則があるから。
下描きありの場合、本来自分の実力では「描けないもの」であっても、十分な参考資料をそろえて修正に修正を重ねればそれなりに描けてしまう。
でも下描きなしのペン画ではそれがありえません。
修正しなければ描けないものはペン画において「描けないもの」になり、資料があろうと「描けないものは描けない」のだと思い知ることになります。
この原則を何度も思い知っていくと、徐々に「描けるものと描けないものの境界線」が感覚的にわかってきます。目標値が境界線の内側だと「描ける」ので気楽。境界線の外側に出ると「描けない」のでしんどい。
そんな肌感覚が身につきます。
高い理想を掲げていたら何も描けないししんどいだけなので、徐々に目標値は下がってきて、最終的には境界線上に収束します。なぜならそこがペン画で描ける最大クオリティだから。
ここまで来れば「理想と実力のギャップ」はゼロになります。
これが画力向上を伴わずにギャップを解消できる「チューニング」の仕組み。その後もギャップが広がることはあるでしょうけど、ペン画を描いていればまたチューニングされます。
このチューニングをスキルとして磨くことがペン画上達の鍵です。
2.絵の再現性確立
絵に自信が持てないもう一つの理由は、「自分で描いた絵の再現性がないこと」だと考えます。
間違いなく自分で描いた作品なのに、時間が経って振り返った時にその絵を再現できる気がしない。
その理由は簡単で、再現するためには描いた時と同様に参考資料を用意して、修正に修正を重ねる必要があるからです。デジタルイラストの場合はPCとデジタルツールも必要でしょう。
だから、それらがない素の状態の自分では「描ける気がしない」のです。
それに対し、下描きなしのペン画に必要なものは紙とペンだけ。なのでペン画で描けたものであれば、また「いつでも描ける」と信じやすい。
それこそ線が引ければペン以外でも描けるし、究極的に紙がなくても棒と地面があれば描けるわけですから。
この「いつでも描ける」と信じられる気持ちが絵の自信のベースになります。
なので別に画力向上せずとも、今描けるものを下描きなしでも再現可能になれば、それで十分自信は底上げされる訳です。
子供時代は誰もが持っていた気持ちなのに、上達努力をしているうちに気付いたら下描きなしでは怖くて何も描けなくなっている。どんなに画力を向上させても、失敗への恐れは消せません。
かつての自信を取り戻すには、恐れと向き合い、下描きやデジタルツールがなくても「描ける」ことを己に証明するしかないでしょう。
ペン画の3大デメリット
上記2点の効用により「いくら描いても絵に自信が持てない悩み」を解消できれば、盲目的に「画力向上」を望む気持ちは鎮まります。再びデジタルイラストに戻っても、前よりもずっと気楽に絵を描けるようになっているはずです。
しかし!!!
メリットもあればデメリットもあるのが現実です。ペン画にも当然デメリットはあり、始めた人を早々に挫折させる大きな障害になっています。
これらの障害を乗り越えられなければ悩みも解消できません。
なぜなら、障害を乗り越えることがそのまま「理想と実力のギャップ解消」と「絵の再現性確立」に直結しているからです。デメリットあってこそのメリット。
でもご安心ください。3大デメリット攻略法こそがこの記事のメインです。
ここから解説する3ステップで、3大デメリットと共に「いくら描いても絵に自信が持てない悩み」を攻略していきましょう!
ペン画の障害について詳しく解説した記事がありますので、よろしければこちらもご覧ください。
STEP1:修正なしでミス対応するスキルを学ぶ
当然ながら下描きなしのペン画では「修正」ができません。
ミスったら即ゲームオーバー。どんなに注意しても人間はミスをゼロにすることはできないので、普通に考えればこの時点で無理ゲーでしょう。
しかし、「修正」以外のミス対応スキルがあるなら話は別です。それがペン画の基礎となる「チューニング(調整)」のスキルになります。
ミスを減らす方法1:計画チューニング
「ミスしない」は無理でも「ミスを減らす」ことならできます。その最も根本的な方法が計画チューニング。
絵を描き始める前段階の選択によってミスの発生率は大きく変わります。これまでずっと絵がしんどかった人は、ここでハードモードを選んでいたのではないでしょうか。
描こうとしている絵に求めるクオリティが「マネタイズにつながるレベル」、「他人に認められるレベル」だったりすると、実力とのギャップが広がるので描くのがしんどくなって当然。
一度自分の計画を見直し、現在の実力に見合ったイージーモードを選び直すところから再スタートしましょう。それが「理想と実力のギャップ解消」の第一歩です。
計画チューニングについて詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。
ミスを減らす方法2:書き順
下描きありであれば、思い浮かんだ順、描きたい順にモノを配置していくことができます。しかし、ペン画においては先に描いたモノの手前には、もう後からモノを配置することができません。
そのためペン画には「できるだけ手前のものから描いていく」という原則があります。この「手前▶奥」の流れを意識できるようになるだけで、ペン画のミスを大幅に減らすことができます。
書き順の原則について詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。
ミスを減らす方法3:丁寧
「いい絵を描く極意は丁寧に描くこと」だなんて誰でもわかっていることですけど、実際丁寧に描き続けるのは難しいものです。
特に下描きありだと「素早くラフ」に描くことが多くなってしまいます。
それを「ゆっくり丁寧」に変えるだけで、ケアレスミスが減るのはもちろんのこと、自分の絵に対する印象が別物のように良くなります。
ペン画を描くための必須アイテム「丁寧」のマインドについて詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。
ミスに対応する方法:リカバリー
「計画チューニング」、「書き順」、「丁寧」を使ってミスを可能な限り減らせたとしても、ゼロにすることは絶対にできません。
でも予め、それでもミスしてしまった時の対応策を用意しておけば、慌てることなくミスに対応することができます。
うまくごまかして、ミスに思えたものを「ミスではないもの」に変換するのが「リカバリー」の基本方針。
そんなゴマカシスキルを言語化し、ストックしていくことでミスしても大丈夫だと思えるようになっていきます。
リカバリーの具体例を知りたい方はこちらの記事をご覧ください。
STEP2:アタリなしで人物を描くスキルを学ぶ
下描きをしないわけですから、当然アタリを使うことはできません。でもそうなると、棒立ちの人物はなんとか描けても、ちょっと動きをつけるだけで人体バランスが簡単に崩れてしまう。
この「人体バランス崩れやすい問題」を攻略するためには、アタリに代わる補助ツールが必要です。その補助ツールこそ、このステップで解説する「アタリなしで人物を描くスキル」になります。
イメージモデル
イメージモデルとは、一言で言ってしまえば想像力のみでアタリを使えるようにした「エア・アタリ」です。
実際に補助線を描かないわけですから、下描きなしのペン画でも問題なく使うことができます。
想像力の高い人だけが使える特殊能力のように思えるかもしれませんけど、アタリを使いこなせている人であれば誰でも使えるようになります。
そのために必要なのは、下描きありで描いてた時は必要なかった「事前準備」。
準備の中でイメージモデルの素体を作り、それをエア・アタリとして使えるまで練習するだけの事です。
イメージモデルの詳しい習得法を知りたい方はこちらの記事をご覧ください。
スタンダードモデル
基本的にはイメージモデルをマスターできれば、下描きなしでも人物を描けるようになります。
しかし、「かわいい人物」を描くにはそれだけでは不十分。
(「かわいい」を「格好いい」や「美しい」などに変換しても同様)
「かわいさ」とは料理の「味」のようなものです。どんなに高級で美味しい食材を使おうとも、食材とミスマッチな調理法、味付けをしてしまえば不味い料理になってしまいます。
それと同じで、人物の顔まではすごくかわいく描けたとしても、その後ミスマッチなパーツとくっつけてしまうと総合的には「かわいくない人物」になってしまう。
そのミスマッチを回避し「かわいさ」という味の再現性を高める方法は、食材や味付けを具体的に定めた「レシピ」を作ることです。
「チャーハンのレシピ」を作るように「チルノのレシピ」を作る。
「チャーハンのレシピ」からはチャーハンしか作れないように、「チルノのレシピ」ではチルノしか描けません。
そのように汎用性はゼロで、特定の人物専用の描き方が「スタンダードモデル」です。これを自分にとっての「かわいい人物を描く方法」の基準と捉えることで、別のキャラクターでも「かわいさ」を再現できるようになります。
スタンダードモデルの詳しい習得法を知りたい方はこちらの記事をご覧ください。
STEP3:下描きなしで背景を描くスキルを学ぶ
なんとかいい感じに人物を描けたとしても、その周囲に広がる無の空間を前にすると手が止まってしまいます。
そこでミスマッチで退屈な背景を描いてしまえば全てが台無しになってしまうからです。でも下描きで試し描きすることはできない。失敗も許されない。
そんなプレッシャーの中で考えていると、何もイメージが浮かばなくなり頭の中が空っぽになってしまいます。
それを自分の想像力と才能のなさの証明と捉えてしまうと心が折れる。
この「背景展開できない問題」を攻略する方法として2つのアプローチを紹介します。
模様背景
背景攻略のポイントは、まず背景を「模様」と「風景」に分割することです。
そして最初に「模様」攻略を選択するのがイージーモード。まずは「模様背景」を描ける様になって、「下描きなしでも背景が描ける」と自信を持てるようになることを目指しましょう。
複雑そうに見える模様も、よく見れば簡単な形の組み合わせに過ぎません。だから「人物」や「風景」の様な長年の観察努力は不要。
「マネして実際に使いながら模様ストックを蓄積していく」だけで模様背景は習得できます。
模様背景についてもっと詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。
プチジオラマ
「模様」を攻略できたなら「風景」にも挑戦して行きましょう。
「風景」を攻略する上で大事なポイントは、背景を「写真撮影」から「ジオラマ作り」の視点に切り替えることです。
要は、背景イメージを膨らませる工程をスモールステップ化して、地面や周辺のガラクタ、人物の動きなどをそれぞれ個別に具体化していこうという話。
この「ジオラマ作り」の視点を獲得するためのアプローチが「プチジオラマ」です。
いきなり大きなジオラマを作るのではなく、フィギュアの台座くらいの大きさに空間を限定して、「近景」のみの背景を作ってみる。
これならパースも構図レイアウトも考慮不要ですし、部分ごとにじっくり背景構築する余裕を持てます。
背景上級者は脳内だけで背景イメージを構築し、その脳内風景をフレームで切り取って出力するだけでいい。そんな「写真撮影」的アプローチを背景初心者が真似するのは無理があるのです。
なのでまずは、自分の足元からじっくり背景イメージを構築する「ジオラマ作り」的アプローチで背景を攻略していきましょう。
プチジオラマについて詳しく知りたい方は次の2つの記事をご覧ください。
ペン画入門クエスト
「何となく理屈はわかったけど、やることが多すぎてわけわからん・・・」
という人のために、ここから取り組むべき具体的な課題をRPG風にまとめてみました。
何事も一気にまとめて攻略しようするより、課題をスモールステップ化した方が上手くいきます。3大デメリットを強力なモンスターに見立てて、1匹ずつ着実に攻略していきましょう。
1.難易度を選択
一番最初にすべきことはゲームの難易度設定です。次の2つから好きな方を選んでください。
もちろんオススメはイージーモードなデフォルメ調。
でも自信があったり、どうしてもリアル調が良い!という方は、一度それで挑戦してみるのも良いでしょう。変更はいつでも可能ですからね。
2.ジョブ分けによるパーティ編成
次は「ジョブ分け」を行って、イラストスキルを分割します。
どんなにレベルが低くてもいいので、自分の中にこれらの能力を見出して個別のキャラクターとして捉えてみましょう。(※ペン画入門クエストでは「語り部」はいなくてもOK)
各キャラクターを順番に育てていくことにより、3大デメリット攻略に必要なスキルを習得できます。
では、仲間が揃ったらクエストスタート!
3.チューニングスキルを習得
1つ目のデメリット『修正できない問題』攻略法は、修正に変わるチューニングスキルの習得です。
なので次の概要をざっと復習し、自分の中の「調律師」に最低限のチューニングスキルを覚えさせられたらクリア!
これでもう修正できなくてもミス対応できるようになりました。
あとは実際にペン画を描きながらスキルを磨いていきましょう。調律師のレベルが上がるごとに『修正できない問題』だけでなく、「理想と実力のギャップ」も解消されていくはずです。
4.イメージモデルを一式作る
2つ目のデメリット『人体バランス崩れやすい問題』を攻略するには、「人形使い」にアタリに代わるスキル「イメージモデル」を習得してもらう必要があります。
まずはイメージモデルの素体を1~”基準頭身+1”頭身まで一式作成。
次に素体を回転させたり動かしたりしながら練習し、資料を見ないでも描けるようにします。
作成したイメージモデルを使い、人体バランスが安定したキャラクターを一発描きできたらクリア!
5.スタンダードモデルを1体作る
イメージモデル習得により人体バランスを安定させることができました。しかし、「かわいさ」などの印象バランスが不安定なままでは満足できないと思います。
なので、真に『人体バランス崩れやすい問題』を攻略するためにも、「人形使い」にはイメージモデルを発展させた奥義「スタンダードモデル」も習得させましょう。
版権キャラでもオリジナルキャラでも構いません。自分の一番のお気に入りキャラクターを選び、今まで蓄積してきた「かわいい人物を描くコツ」をその一体に集約させます。
スタンダードモデルを使って描いたキャラクターを「かわいい!」と思えたらクリア!
(「かわいい」ではなく、「格好いい」、「美しい」などに置き換えても可)
6.模様コレクションを集めてマインドマップにまとめる
恐らく、3大デメリットの中で最も攻略が難しいのは『背景展開できない問題』でしょう。人物のように背景用モチーフのスタンダードモデルを作っていくのも一つの手ですけど、数が多すぎるのでそれだけではカバーしきれません。
そこで「模様使い」の出番です。とりあえず平面的で覚えやすい「模様背景」を習得できれば、「背景を描ける気がしない」状態を脱してその先に進みやすくなります。
最初は他人のイラストを見て、気に入った模様背景をマネするところから始めてみましょう。そして簡単にマネできて、今後も使っていきたいと思った模様を収集していきます。
収集した模様をマインドマップを使って、「グー・チョキ・パー」の型に分類できたらクリア!
こうして整理しておくことで記憶を引き出しやすくなり、模様の使い勝手が上がります。
マインドマップは手描きでも全然構わないですけど、何度も更新したり、写真を貼り付けたりできることを考えると、スマホアプリの方が使い勝手が良いです。
僕は長年「iThoughts」を利用してます。(アンドロイド未対応)
7.定番模様を1つ作る
模様を集めるだけでは実用性に欠けるので、模様コレクションの中で気軽に描けるお気に入りの模様を選び、自分の定番模様に設定しましょう。
「とりあえず迷った時はその定番模様を描こう」と1つのパターンを決めておけば、「何も描けない……」と絶望することがなくなって「背景への苦手意識」を軽減できるからです。
また、これは「模様使い」がいつでも使える得意技、もしくは記憶の中の模様コレクションを想起する鍵として機能します。
選んだ定番模様を使い、模様背景付きのキャラクターイラストを描けたらクリア!
8.草原、道路、自室のプチジオラマを作る
模様背景を展開できるようになったら、次は「ジオラマ師」を育成し、「風景」の攻略に挑みましょう。
風景攻略には、まず「プチジオラマ」を習得すること。
それにより、構成要素を分解して一つずつイメージを固めて行く「ジオラマ作りの視点」が獲得され、ペン画一発描きでも立体的背景の構築が可能になります。
最初の取っ掛かりとして「草原、道路、自室」のプチジオラマを作ってみましょう。
とりあえずこの3つを作れれば「アウトドア(自然)・アウトドア(人工)・インドア」の3種類を網羅できます。日常生活の中で多く目にしている風景なので、改めて観察しなくても記憶だけで再現できるはず。
見事3種類のプチジオラマ(キャラクター入り)を描けたらクリア!
9.ジオラマコレクションを集めてマインドマップにまとめる
模様コレクションと同じく、こちらもストックを集めつつマインドマップで整理しておきましょう。
「アウトドア(自然)・アウトドア(人工)・インドア」の3分類に整理できたらクリア!
10.3~9をマイハウツー本にまとめる
ここまでのクエストをクリアできた方はおめでとうございます!!
これであなたはペン画の3大デメリットを攻略できました。ペン画を始める前と比べると「理想と実力のギャップ」はかなり埋まって来たのではないかと思います。
ただし、ここまでに描いてきたイラストを「またいつでも描ける」と自信を持って言えるほど「絵の再現性確立」ができていない方も多いのではないかとも思います。
そのモヤモヤを解消するための最後の課題……それは、ここまでの成果を1冊のファイルにまとめたマイハウツー本を作ることです。
その目的は、習得したコツを覚えているうちに言語化して忘却対策とすること。要は忘却されてもまたここに戻ってこれるよう、セーブ機能を担う「冒険の書」を作るわけです。
頑張って習得したコツも、時間が経てば必ず忘却の波に飲まれ、少しずつ薄れて行ってしまいます。だとしたら再現性は確立したことになりません。
ラクガキ帳を見れば思い出せるかもしれませんけど、情報が整理されていないので簡単には思い出せないはず。
でもマイハウツー本として1冊にまとめておけば、いつでも簡単に思い出せます。情報を整理していくうちに理解度が深まるのもメリット。ただのメモ書きではなく、他人に教えるつもりでまとめてみると学んだ知識が自分の知識になります。
ちなみに忘却とは記憶定着の必須工程であることをご存知でしょうか?
脳の短期記憶に一時保管された記憶はすぐに忘却されてしまいますが、そこから何度も「想起▶忘却▶想起▶忘却……」を繰り返していくうちに「よく想起される重要な記憶」と脳に認識されて長期記憶にシフトしていくのです。
だから「絵の再現性確立」には忘却も必要ということ。問題なのは忘却ではなく、想起できないことです。長期戦を前提として想起できる備えさえしてあれば、忘却を恐れる必要はなくなります。
とは言え、「いくら描いても絵の自信を持てない悩み」が解消されるのはそんな先のことではないと思います。完成したマイハウツー本を振り返っていたら、
「今の自分ならいつでも描ける」
そう思える瞬間があるでしょうから。
マイハウツー本の詳しい作り方について知りたい方はこちらの記事をご覧ください。
◆
◆
◆
あとがき(修正版)
記事をリライトしたついでにあとがきも修正することにしました。
理由は、このまとめ記事を最初にアップロードしてからしばらくして、約3年ぶりに「下描き再採用」するキッカケがあったからです。
それは弟の結婚式のウェルカムボード依頼でした。
初めてウェルカムボードを描くプレッシャーもあり、流石に「下描きなし」に拘り続けるわけにも行かなかったのです。そしたら一つ発見がありました。
「下描き…………、超便利!!」
下描きなしだったら「描けない」とわかっているモチーフも資料があれば余裕で使える!
構図を比較検討&微調整できるだけで絵のクオリティは全然変わる!
修正できる安心感パネェ!
下描きとは、実力はそのままなのに画力を向上させてしまう凄いスキルだったんだな!
……と軽く感激してしまいました。現時点ではまだ試してませんけど、デジタルツールでも同じような効果を実感できるだろうなと期待しています。
ペン画を始める前は、不遜にもこれらを「実力とは関係ないただのツール」としか捉えていませんでした。当時は「実力=作品のクオリティ」だと考えていましたから。
でも今は「実力=下描きなしで描けるクオリティ」だと考えています。だからそれらのありがたみが分かるようになったのでしょう。この気付きをキッカケに「下描き再採用」を認めた次第です。
僕はこの3年間、下描きなしのペン画しか描いてきませんでした。下描きありで描いていたらまた「理想と実力のギャップ」が開いてしまう気がしていたからです。(あと手も汚れるし、消しカス処理めんどいし……)
でも多分もう大丈夫だなと思えました。
今後は、基本的には下描きなしで描きつつ、時々、ブログ用イラストを描く時などは下描きありでも描いていこうと思ってます。
▲僕はずっとこの2つを使ってペン画を描いています。
ピグマのミリペンは、速乾性、耐水性があって滲まないし、インクがかすれにくくて長持ち。
マルマンのクロッキー帳は、描き心地が良くて、一冊の容量がなんと100枚。
オススメ!
【関連記事】ペン画に挑戦する以前に、絵を描くモチベーションが上がらない・・・という場合はまずこちらの記事をご覧ください。
コメント