もっと良い絵のアイディアは出せないものか・・・でも難しすぎても描けなきゃ意味ないし・・・カンタンすぎても描く意味ないし・・・もっとこう、グッとくるアイディアを・・・!!
そんな事を考えているうちに、自分が思いつく全てのアイディアがくだらなく思えてきて何も描けなくなる。
絵を描いているとそんな感じで気づいたらスランプになってることが定期的にあります。
よくあることとは言え、スランプはこじらせると自信喪失を引き起こすので油断できません。
こじらせないためには、スランプが起こる原理を把握し、対処法を明確化しておく必要があります。
僕はそれらを、元「日本一有名なニート」ことphaさんの本『持たない幸福論』から学びました。
この記事では、本から学んだスランプの原理と、効果的な対処法である「上達禁止」について解説しています。
仕事スランプの脱出サイクル
この本では「働きたくない、家族を作らない、お金に縛られない」など、既存の価値感を手放した上で再構築した、普通とは違う価値感が紹介されています。
その中で僕が最も面白いと感じたのが「社会との距離感を考えるための図(上の見出し画像参照)」です。
この図は「自己肯定⇔自己否定」、「社会肯定⇔社会否定」の二軸で社会に対する自分のポジションを4種類に分割しています。
これを見ると、仕事でどうしようもなく行き詰まったとき、ある意味「仕事スランプ」と呼べる状態のときに、自分がどういう状況なのかがわかりやすくなります。
①社会的で幸福(理想的)
「仕事も自分もいい感じ」で理想的な状態。
ここにずっと居続けられれば何も問題ありません。
しかし、人は生きていると時々②の領域に流されてしまいます。
②社会的だけど不幸(社畜的)
「やらなきゃいけない仕事はあるけど、辛い・・・」という不調状態。
ちょっとした不調ですぐ①に復帰できればさほど問題はありません。
しかし状況悪化が続き、②から抜け出せなくなると仕事スランプに陥ります。
自分なりにベストを尽くしているのに周囲から全く認めてもらえずに冷遇され続けたり、仕事の負担が重くなる一方で状況が良くなる兆しがない。
正直もう「働く意味」を見失っているけど、生活のために仕事は辞められない。
そうなると自己肯定し続けるのが難しくなり、自己否定を蓄積して人生が行き詰まる。
この仕事スランプを解消する最も効果的な方法は、「社会否定を選ぶこと」です。
③孤独で不幸(ひきこもり的)
「もう自分はダメだ。仕事も何もかもどうでもいい」という自暴自棄な状態。
開き直って残業や休日出勤を断固拒否したり、仕事をサボったり、辞めてしまったりする状態。
自分も社会も否定する最悪の状態ではあるものの、スランプの原因から距離を取れます。
スランプの主な原因は「高すぎる理想」と「心身疲労」です。
実力と理想のギャップが開きすぎると努力と成果が噛み合わなくなり、自分で自分を認められなくなります。
さらに心身疲労が重なれば本来の実力すら発揮できなくなり、状況は悪化し続けるわけです。
これらの悪影響は社会を否定してしまえば一気に軽くなります。
周囲に嫌われる覚悟を持てれば「高すぎる理想」は放棄できますし、仕事よりも休息を優先しやすくなって「心身疲労」も回復できますから。
③の領域にシフトできたら注力すべきは「心身回復」。
十分な休息を取って心身の健康が回復できればスランプは半分解決です。
②で苦しんだ期間が長いほど③は長く深くなるので、あまり我慢せず早めに社会否定してしまったほうがガス抜きも軽めで済みます。
心身が回復すると自己肯定も回復してくるので、徐々に④の領域に移行していけます。
④孤独だけど幸福(ニート的)
「ひたすらに自分の好きなことをしているだけで楽しい」という解放的な状態。
周囲からの評価は下がっているので孤独になりやすい状態ではあるものの、健康と自己肯定を保てていれば幸福度も保てます。
④の領域では「自己肯定の回復」に注力するのが大事。
そのためには「小さな成功体験」の蓄積が必要であり、それにはひたすら好きなことをやるのが一番良い。
自己肯定が十分に回復してくると、徐々に寂しさや物足りなさから再び他人や社会と関わる意識が芽生えてきて、自然と①に復帰していけるわけです。
ただし、①への復帰を焦ったり、一発逆転の「大きな成功」を目指してしまうと「小さな成功体験」を蓄積できないので上手く復帰できなくなります。
逆に「失敗体験」ばかり蓄積して自己否定を強めることになるので③に逆戻り。
なので焦らず、状況が許す限り自己肯定の回復を継続するのがスランプ脱出の鍵です。
仕事スランプをスムーズに脱出する方法は「②▶①」のルートに執着せず、早めに「②▶③▶④▶①」のルートを選ぶこと。
そのためには一度、高まりすぎた「社会肯定」を手放す必要があります。
そして、この考え方はそのままイラストスランプにも応用できます。
イラストスランプの脱出サイクル
仕事スランプは「自分/社会」の二軸だったのに対し、イラストスランプは「自分/上達」で考えます。
イラストスランプ脱出の鍵は「上達肯定」を手放すことですから。
①上達期:「描ける」という自信がある
初心者でも、普段絵を描いてない人でも最初はココ。
絵を描くたびに上達感もあり、絵を描くのが面白い、楽しいと思えます。
でも「もっと上手くなりたい」という上達意欲が強くなるほど、理想が高まり②に近づいていく。
②スランプ期:「描ける」という自信を失う
理想が高くなるほど「描けない」という感覚が強くなっていきます。
努力で理想と実力のギャップを埋められなくなったら本格的なスランプ期。
描きたい理想イメージを実力では表現不可能になり、やる気はあっても描けない状態。
無理やり描いてみても、自分で自分の絵を認められない。
ギャップを埋めるために練習や勉強をしても、自分の絵の悪いところが強調されるばかり。
理想が高すぎるのだと自覚できてもハードルを下げられない。
深みにハマってしまい、ここで何年も停滞してしまう人も多いはずです。
ここから抜け出すのに必要なのは、上達意欲を否定し「描けないものは描けない」のだと認めてしまうこと。
それができれば「②▶③▶④▶①」の復帰ルートの流れに乗れます。
③リセット期:「描けない」と認める
絵を描く上で上達意欲は大事な欲求です。
しかし、それが高まりすぎると理想と実力のギャップが広がって絵が描けなくなってしまいます。
その症状を何とかする一番カンタンな方法は、一度リセットしてしまうこと。
やり方はシンプルに「上達を諦める」だけです。
「今の自分がどれだけ努力しようとも、理想の絵は描けない」のだと諦めてしまう。
そしてしばらく絵を描く以外のことをやりましょう。
気分転換をしたり、十分な睡眠を取ったりして、スランプで消耗した心身の回復に努めます。
③の長さは人それぞれ。
再び描きたくなるまで数ヶ月絵から離れてもいいし、数時間の休息でも十分回復できて気持ちが落ち着いたなら④に進んで大丈夫です。
(なかなかモチベーションが回復しない場合は、こちらの記事から「セルフコンパッション」を学んでみるのがオススメです)
④チューニング期:「描けるもの」を育てる
ここでは再びスランプと向き合い、脱出法を模索します。
②では「理想に合わせて実力を調整する」ことを目指していました。
④では「実力に合わせて理想を調整する」ことを目指します。
上達努力をして実力を底上げするのではなく、理想を下げて実力とのギャップをゼロに近づけるのです。
そのために必要なルールが「上達禁止」。
上達努力でなんとかならないと思い知ったからこそ、③で上達を諦めたわけです。
その価値感のまま、上達以外の方法で「自分が認められる絵の描き方」を考えましょう。
僕の場合はノートに文章で書き出しながら、「こうしたら描けそう」と思える案がまとまるまで考え続けます。
案がまとまったら、あとはトライ&エラーを繰り返すのみです。
「自分が描けるもの」を描いて「小さな成功体験」を蓄積し、「描ける」という自信を取り戻せたらスランプ脱出。
①の上達期に復帰し、再び上達の手応えを感じられるようになります。
(④は締切なしの長期戦で取り組んだ方が良いです。どうしてもスランプ脱出を急ぎがちな方はこちらの記事も合わせてご覧ください)
上達禁止で進むスランプ脱出の旅
「上達禁止」とは「上達してはいけない」という意味ではなく、「上達を目指してはいけない」という意味です。
うつ病の人にとって「頑張る」のが毒になるのと似たようなもの。
僕はスランプ中の人にとって「上達意欲」は毒だと考えます。
なぜなら上達にフォーカスすることは、自分の不足にフォーカスするのと同じことだから。
上達しようと強く願うほど、自分の絵のダメなところ、自分の能力不足に注目してしまって苦手意識ばかり強化されてしまいます。
上達禁止にすると「上達を手放す=理想を手放す」ことになり、意識の焦点を「理想」から「実力」に切り替えられます。
「自分が描けないもの」から「自分が描けるもの」へ。
描けないもの見つけて克服するのではなく、描けるものの良さを見つけて祝福する。
描けるものの良さを活かした絵を理想とすればギャップは埋まり、見失っていた「自分の描き方」を再発見できます。
それこそがスランプ脱出の旅で目指すべきゴールであり、再び上達できるようになるためのスタート地点なのです。
まとめ
上達意欲は上達期に存分に燃やせば良い。
スランプ中は基礎固めに集中すべきタイミングなんだと割り切ってしまうと回復がスムーズです。
それにスランプを脱出できたとき、あなたは確実にスランプ前より上達しています。
なので上達禁止にしても何も心配はいりません。
あとがき
何かに向上心を持って取り組んでいればスランプは避けられないものです。
そしてまさにこの記事作成中にも、僕はスランプに陥っていました。
『持たない幸福論』の「社会との距離感を考えるための図」をメインテーマとして書くことは変わっていません。
ただ最初は「人生の行き詰まり解消法」という、かなり幅広なロジックを展開しようとしていました。
序盤は順調で、下書きレベルの文章はすんなり書けました。
しかし、そこから細かい理屈を整理していると色んな矛盾点や例外パターンが浮かんできて、筆が進まなくなってしまったのです。
「ああ、これは完全にスランプだわ・・・」と思って一度リセット。
そこから数日間地道に考察を続けて導き出されたのは、「自分が一つでも行き詰まった問題を抱えた状態では、人生の行き詰まり解消法は成立しない」という、気づいてみれば当たり前の原則でした。
でもこの気づきのおかげで「じゃあ解決済み問題の解消法だったら成立する」とわかり、「イラストスランプ解消法」という範囲を限定した形で再構築できた次第です。
いくら考えても「書けないものは書けない」。
それがわかれば「書けるもの」が見つかりスランプを抜けられるのだと、この記事作成を通して再認識できました。
▲本の表紙にも書かれている「働きたくない、家族を作らない、お金に縛られない」という、普通と違った価値感の根本には、記事で解説したスランプ脱出の考え方があるのだと思います。
まず「社会否定」によって既存の価値観を手放したから、より自分に適した価値感を再構築できたのだろうなと。
「社会肯定」を手放せない状態では行き詰まりの解決策は見えてきません。
本書を読めば、「社会否定」のハードルを下げるヒントを得られます。
【関連記事】理想と実力のギャップをチューニングする方法として、「下書きなしのペン画」を試してみるのもオススメです。
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