創作活動をしていると「創作に締切は必要」、「締切があるから完成できる」と言った意見を多く耳にします。
でも僕は今まで締切からの逆算スケジューリングで創作が上手く行った試しがほぼなかったし、始めたばかりなのもあって、ブログはこれまで締切なしで書いてきました。
しかし、「流石に月2ペースでは遅すぎか・・・」と思い始めてきたのもあって、ペースアップに繫がるならと苦手な締切を再び採用してみることにしました。
その結果たどり着いたのが「創作に締切は必要ない」という結論です。
もちろん仕事は別です。
他人との約束が伴わない自己完結型の創作に限ります。
自己完結できる創作でも、締切ありで特に問題がない人も別。
それ以外で、もし何かしら問題が生じている人は一度「締切の必要性」について考えてみましょう。
理由その1.締切効果はなくても良い
締切を設ける最大のメリットは、タイムプレッシャーによって集中力が高まる締切効果でしょう。
しかし、これがなくても問題ない理由が2つあります。
1.後半集中力が上がる代わりに前半集中力が下がりやすくなってしまうから
「本気出せばなんとかなる」と締切効果に期待する気持ちが強いほど、この傾向は強くなるでしょう。
対して「締切なし」であれば、締切効果に期待しようがないので、必要に合わせて自発的に集中力を発揮することになります。
つまり後半ににまとめて集中するか、前半からコンスタントに集中するかの違いでしかないため、締切効果があればパフォーマンスが上がるわけではないのです。
2.毎回発動する保証がないから
締切を設ければ必ず超集中できるわけではありません。
体調や締切の頻度によって発動確率にはブレがあります。
仮に発動したとしても、集中力アップの度合いは締切の強制力や個人の性格によっても大きく変動します。
そうなるとほとんど運まかせ。
そんな小さなメリットに対して正直デメリットが大きすぎるのです。
中でも特に大きいと思う2つのデメリットを次章から解説していきます。
ちなみに、タイムアタックの様にタイムプレッシャーを活用した集中力向上法が存在するのも事実です。
しかし、あれは短時間の「一時的緊張」だから有効なのです。
締切によって何日もタイムプレッシャーが続く「慢性的緊張」は、メリットよりもデメリットの方が大きくなります。
理由その2.締切があると落ち着けない
締切を設ける根本的な目的は「加速」です。
「締切なし」でやったら遅れてしまう可能性があるから、「締切あり」にして一定以上のペースで進めることを強制する仕組み。
「減速」できなくする仕組みと捉えることもできます。
締切のルールを次のように数式で表してみます。
どんなにスケジュールに余裕をもたせようと、途中のペースに波があろうとも、「必要速度v」を下回る速度に「減速」することは作業の遅れを意味します。
そして作業の遅れやイレギュラーイベントが発生した分だけ「残り時間t」は小さくなり、ひたすらに「加速」だけを求められるわけです。
つまり「締切あり」だと焦りやすくなる。
焦れば当然集中力は下がりますし、遅ればかり意識することになるので「前進感」を見失ってメンタルが不安定になりやすいです。
また、焦るとゴールまでの最短ルートを選びがち。
山登りで直線的に山頂を目指すようなものなので、無意識のうちに課題の難易度を上げてしまっています。
一言で言えば「締切ありだとハードモードに陥りやすい」ということです。なので逆説的に「締切なしにするとイージーモードにシフトする」と言えます。
目標が「締切までに完成させる」から「完成するまでやる」に変わるだけのことですけど、難易度は劇的に変わります。
理由は焦りに対して「妥協・効率化」だけではなく、「減速」でも対応できるからです。
「妥協」は完成時の満足度を下げるので抵抗がありますし、「効率化」が簡単にできるんだったら苦労しません。
でも「減速」ができるなら、いつでも焦りの特効薬「時間」を投与してすぐに落ち着きを取り戻せます。
落ち着いていると集中力も安定するので、本来のパフォーマンスを発揮しやすくなるでしょう。
理由その3.締切があると作業量が膨張する
焦るのが問題なら、最初から「制限時間t」を増やしたり「ノルマの量x」を減らして、「必要速度v」を遅くしておけばいいじゃないかと考えることもできるでしょう。
僕も同じことを考えました。
僕のブログ更新ペースアップ計画は大まかにこんな感じです。
しかし、結果は2記事試して2記事とも締切をオーバー。
「おい、嘘だろ・・・」って思いました。
この現象を説明してくれるのが「パーキンソンの法則」です。
【パーキンソンの法則】
引用:Wikipedia
仕事の量は、完成のために与えられた時間を全て満たすまで膨張する。
この法則は次のようなものが原因と言われています。
・時間的余裕があるうちは先送りしやすく集中力が上がりにくい
・課題クリアに必要な時間の見積もりミス(不慣れな課題ほど顕著)
前者の原因については、次章で紹介する「スモールステップ」によって回避できていました。
後者についても、過去データをベースにして100%クリアできる時間を用意したはずなのに、余裕分だけ作業量が膨張して逆にペースダウンしてしまったのです。
理由として考えられるのは、「理由その2」で述べたようにタイムプレッシャーで「焦り」や「難易度」が上昇し、パフォーマンスが下がっていたということ。
また実感として、プレッシャーで「不安」も喚起されてしまい、細かい「不安を埋めるための作業」が時間枠一杯まで膨張してしまったのではないかとも考えています。
一応「パーキンソンの法則」の対処法として、タイトスケジュールにして作業量の膨張限界を絞っておくというものがあります。
僕のブログ更新ペースアップ計画も、スタートは余裕のあるスケジュールでしたけど、最終的にはタイトスケジュールを目指すものでした。
でも試してみて、これは創作には不向きだと感じました。
仕事であれば必要最低限の基準さえクリアできていれば、基本的にそれ以上のクオリティよりもスピードの方が重視されます。
なので大幅に妥協してでも早期完成させる意味はあるでしょう。
しかし、完成させてもお金に繫がるわけでもない創作においてはスピードに大した価値はありません。
妥協した分だけ過程の楽しさも完成時の満足度も小さくなり、虚しさに収束するだけ。
「量は質を生む」と言いますけど、雑な字を何万回書いても上手くならないように、雑なアウトプットはいくら続けても雑なままです。
余裕のあるスケジュールは作業量を膨張させる。
余裕のないタイトスケジュールは雑なアウトプットを増やすだけ。
更には「締切オーバー」という失敗経験を増やしてムダに自信を消耗する。
だったら多少ゆっくりでも「締切なし」のマイペースで創作するのがベストではないか、という結論に自然と収束するわけです。
締切に代わるマネジメントスキル
ここまでは創作に締切が必要ない理由を解説してきました。
しかし、「締切がなかったら妥協できずに永遠に完成できないかもしれない・・・」という不安を抱く方もいるのではないかと思います。
でも大丈夫。
その不安は次の2つのスキルを使えば解消できます。
1.健康習慣(集中力の底上げ)
「締切なし」でも無事完成に至るための方法は、「デフォルトの集中力を底上げして、丁度いい難易度にチューニングすること」です。
「締切なし」で完成できないリスクとして「意識が分散しやすい事」が考えられます。
時間的余裕がありすぎて色んなものに気が散りやすくなり、創作活動に集中できなければ完成できなくなるも当然です。
集中力というのは、目先の欲望に負けずに大事なことにコツコツ取り組める能力のこと。
なので集中力を底上げすることで未完リスクは軽減できます。
その上で欠かせないのは、集中力の土台である「健康」を増進すること。
集中力とは、複数の要素が組み合わさって成立する能力です。
次のようなピラミッド型をイメージするとわかりやすいでしょう。
ピラミッドの構成はグラデーションであるため、人によって細かい解釈は異なると思います。
とりあえずここではシンプルに「集中力<モチベーション<健康」の3段構成としておきます。
集中力向上法をいくら試したとしてもモチベーションが死んでいれば集中力は上がりません。
普段モチベーションが高くても体調不良になれば、モチベーションも集中力も下がります。
なので当たり前すぎる話ですが、まずは「睡眠・運動・食事」の習慣をできる限り改善しましょう。
更に「瞑想」を習慣に取り入れることができれば、メンタルを安定させつつ集中力アップに繋げられます。
2.スモールステップ(難易度のチューニング)
健康の土台が安定したら、次はモチベーションを安定させていきましょう。
そのためには、もう一つの未完リスク「難易度エラー」によってモチベーションが下がってしまうことへの対策が必要です。
モチベーションは課題の重要性に加えて、難しすぎず簡単すぎない「丁度いい難易度」である場合に高まります。
モチベーションも健康と同じように変動し続けるものです。
特に時間制限という妥協理由を失うと、こだわりに偏りすぎて「締切あり」とは別の理由で難易度が上がりやすい。
でも「締切なし」は「減速」できる分、難易度をチューニングできる余地が大きいのでモチベーション維持がしやすいです。
そのチューニング方法として最適なのが「課題を分割する」というシンプルイズベストなスキル、「スモールステップ」です。
オススメの使い方は、「ルートのスモールステップ化」と「ゴールのスモールステップ化」の2種類にして使い分けることです。
ルートのスモールステップ化
これはゴールまでのルートを分解して、スゴロクみたいな数珠つなぎ状のルートに再構築することです。
課題全体を見ている時は、スゴロクマスが複雑に絡み合った一塊のパズルみたいで難しく感じます。
でも、それをほどいて1マスずつ小分け課題を攻略していく形にすると、同じ課題でも体感難易度は小さくなります。
この原理を上手く活用して、難しいと感じる時はルートを延長してマスを増やし、簡単と感じる時はマスを減らすことで難易度をチューニングできるというわけです。
壁にぶつかって進めなくなったとしても、更に遠回りするルートを開拓すれば何とかなる。
遠回りルートは、締切を手放して「減速」できるようになったからこそ見出せる道です。
どうもやる気が出ない時なんかも、ゴールが視界に入らない方向に進路変更してみることでモチベーションを回復できます。
ゴールのスモールステップ化
こちらは「ルートのスモールステップ化」をいくらやってもモチベーションが回復しない時の対処法です。
ルートを細分化し続けていけば、どこまでも難易度は下げられます。
でもそれによってゴールまでの距離が広がりすぎてしまうと別の問題が生じてしまいます。
その問題とは、いくら目の前の小分け課題をクリアしてもゴールに近づいている手応えを感じられなくなることです。
この不毛感に飲まれてしまえば、当然モチベーションも失われます。
その状態を脱するには目標を下げるしかありません。
それが「ゴールのスモールステップ化」です。
個人的に効果的と思うやり方は次の通り。
要は、モチベーションの源泉である「最初の動機」を満たせる条件の中で最も簡単なものを新しいゴールに設定するという事です。
不毛感を感じるほどの難易度エラーは、最大限簡易化しなければ再び「できそう」と思うのは難しいです。
時には表現手法そのものを変える必要だってあるでしょう。
目標を下げることに対して「逃げ・妥協なんじゃないか?」といったネガティブな抵抗感を抱くようであれば、もう少し粘ってみるのもありです。
間違いなく苦行を味わうことになりますけど、もしかしたらそれで理想のゴールに到達できる可能性もありますから。
到達できなかったとしても、「時間がいくらあってもできない。10年かければできるかもしれないけどモチベーションを維持できそうにない・・・」と思い知ることができる。
その時初めて「できないものはできない」のだと心の底から納得できます。
すると抵抗感は解消され、前に進む必要条件として「ゴールのスモールステップ化」を実践できる様になっているでしょう。
ちなみに、過去記事【下書き無しで絵を描くためのイージーモード戦略】にて、スモールステップをイラスト作成に応用した例があるので良かったら参考にどうぞ。
まとめ
健康の土台を安定させて、スモールステップで難易度チューニングしながら作業を進めていけば、いつかは完成にたどり着けます。
それで完成できない場合は、今の実力では「できないこと」なのだと認めてゴール調整するしかありません。
もしくは「やりたいこと」ではなくなったのです。
締切は「やりたくないこと」でもできる様にしてしまうすごい仕組みです。
基本的に「締切なし」では「やりたくないこと」はできません。締切がないなら誰だって永遠に先送りします。
途中で諦めてしまったり、いつまでも先送りしてしまうようなら、最初はどうあれ「もうやりたくなくなった」ということ。
モチベーションが尽きてしまったのです。
やりたい気持ちを維持できなかった。
でも、それで良いのだと思います。
締切なしでも完成させられるものだけが「やりたいこと」なんですから。
だからもう、創作に締切は必要ないのです。
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あとがき
まあ「締切なし」については賛否両論あると思います。
締切との相性は個人の気質にもよるでしょうから。
僕は完全にマイペース気質らしく、他人だけでなく自分が決めたものでもペースを強制されるのが苦手みたいです。
もし別タイプの気質の人なら、「創作に締切は必要」なのかもしれません。
今回のブログ更新ペースアップ計画は、元々「集中力を高めて更新ペースを上げる」方針で始めたものでした。
ネットや本で集中力向上法を学び、実際に使ってみて効果が高かったものをブログ記事にまとめる予定だったわけです。
そのはずが、集中力アップに有効とされる「締切からの逆算スケジューリング」の半端ない悪影響を味わった結果、この自戒記事を書くに至りました。
結局「締切なし▶締切あり▶締切なし」に戻っただけで客観的には何も変わっていません。
しかし、「海外旅行をしたら日本の良さがよくわかった」みたいな感じで、主観的には「締切なし」の良さがよくわかりました。
かなり迷走したけどなんとか記事も完成できたし、僕的には満足しています。
▲この記事作成中に読んだエッセイ本。
「40歳まで一生懸命生きてきて幸せになれなかったから、一生懸命生きない人生を求めて会社を辞めた著者」に自分の境遇が似ていたこともあってポチりました。
この本に「締切なし」の選択を後押ししてもらえた気がします。
僕も危うく「締切あり」のハードモードで一生懸命創作するところでした。
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