描きたいものと実力のギャップが大きいと、当然ながら「描きたくても描けない」状態に陥りモチベーションは枯渇してしまいます。
それが問題だと頭では分かってるけど、どうしたらハードルを下げらるのかわからない・・・
こうした悩みを抱えている人もいると思います。僕自身がそうでしたから。
この解決法として前回の記事では目標など、イラスト作成の構成要素を個別にチューニングする方法を紹介しました。
ただし描きたいものと実力のギャップは色んな要素が複雑に絡み合っているので、多面的にアプローチを考えるのが効果的です。
そこで、今回は個人的にチューニングに影響が大きかった要素TOP5を紹介します。
第5位 健康になること
チューニングとは、自分のコンディションを最適な状態に調整し、パフォーマンスを最大化することです。
絵を描くたびに「自己否定のノイズ」に苦しみ続ける状態を「不調」と知り、その原因を一つずつ紐解きながら調子を整えていく行為。
その上で一番最初にしなければならないのが「焦りを鎮め、冷静になること」です。
好きな漫画家、イラストレーターへの憧れや、他者に否定されて膨らんだ承認欲求によって生じる「もっと努力しないと」という焦り。
これが「己に対する要求ハードル」を上げてしまう原因になるわけですから、まずはこの焦りを鎮めることが最初のチューニングです。
しかし、不健康だとそれが難しくなります。
睡眠不足でも栄養不足でも人はイライラしやすくなりますし、運動不足の人はストレスを溜め込みやすく不安定になります。
当然、焦りを鎮める自制心も弱くなる。それでは周囲の意見や情報に振り回され続けてしまいます。
いくら徹夜して自分を追い込んでも奇跡は起こらないですし、締切効果に期待したところでできないものはできません。全てを犠牲にして苦行に身を投じたとしても神様は助けてくれないでしょう。
だから焦って自分に無理を強いても仕方がありません。問題があるのなら、一度冷静にならなければまともに思考することもできない。
しかし体調をコントロールできていなければ、メンタルのコントロールもできるわけがありません。
まずは毎日十分な睡眠を確保できるようになるところから始めましょう。睡眠不足だと脳のパフォーマンスは酔っぱらい状態と同レベルになってしまうのですから。
でもやってみると、意外に「夜早く寝る」というのは難しいものです。疲れている時ほど、寝る前にネットや本を見てダラダラしがち。
しかし十分に睡眠を取れた日と、睡眠不足の日のパフォーマンスは別物です。ストレス耐性も跳ね上がります。
その爽快さがクセになってくれば徐々に睡眠不足のダルさが嫌になり、早く寝る習慣が安定してくると思います。
睡眠が安定してきたら食事のバランスを整え、軽い運動を習慣に取り入れていきましょう。
体調を整えることとチューニングは本質的に同じです。なので体調管理を通じてチューニングの基礎を学べます。
第4位 オリジナルキャラを作ること
チューニングとは他者との比較競争から離脱し、マイペースにシフトすることです。
絵を描いていると、同じ題材を自分よりも遥かにハイクオリティな表現で描ける上位互換の人がいくらでもいる事実に気が付きます。
そんな中で自分が頑張ってこの絵を描く必要はあるんだろうかと、「自分が描く意義」を見失いそうになる。
さらに一般的に絵を描かない人達はプロの漫画家やイラストレーター、人気絵師の絵しか見ていないので、必然的に彼らの絵と比較されてしまいます。
当然厳しい評価を受け続けることになり、モチベーションは風前の灯となるでしょう。
しかしオリジナルキャラは「比較されにくい」性質があります。
版権キャラであれば作者が一番上手く描くことができ、どんなに上手く真似して描いても劣化の印象が拭いきれません。
対してオリジナルキャラであれば、自分が作者ですから上位互換は存在せず、劣化の印象も生じません。
周囲の人達も比較材料となる原作を知らないため、比較による「上手い・下手」の評価がしにくくなります。
まあそれでも否定する人は否定しますし、版権キャラよりもウケが悪くなってしまうデメリットはあるでしょう。ただそれを加味しても「否定されにくくなる」というメリットは大きいです。
何より自分自身が他者との比較をしなくても良くなるので、安心して描くことができます。
版権キャラであっても長年描き続けて「マイキャラ」と呼べるほどに愛着が湧いたキャラであれば、それほど上位互換を気にしなくなります。
でも他者評価の厳しさは変わらないため、「人前でも描けるもの」として1人はオリジナルキャラを準備できていたほうがチューニングしやすくなります。
苦手意識克服のためです。己のフェチズムを全開にして、好きな要素を満載した理想のキャラクターを創り出しましょう。
第3位 書くこと
チューニングとは戦略を考えることです。
そして苦手意識の強い人に最も有効な考える手段は「書きながら考える」ことです。
苦手意識の強い人が頭の中だけで考えようとすると、「自己否定のノイズ」によって新しいアイディアが延々と否定され、思考が同じ場所から展開できず堂々巡りに陥りがちです。
しかし文字として頭の外に出力した文章レベルのアイディアであれば、「自己否定のノイズ」が響いても消されることはありません。
たったそれだけのことですけど、圧倒的に堂々巡りに陥りにくくなるでしょう。
慣れないうちはパソコンなどに打ち込むデジタル出力より、ノートなどにペンで書き込んでいくアナログ出力のほうがオススメです。
デジタルは既に頭の中にある程度まとまった思考があって、それを次々に吐き出しながら思考を整理していくのには向いています。
その反面、特に取っかかりもなく手探りで思考していかなければならない状況では、すぐ書くことがなくなり手が止まりやすいのです。
対してアナログであれば文字を書く速度が思考に追いつくことはないため、次に書くことを考えながら進めていけます。
さらに、丁寧に文字を書いていると書道の効用もあって心が落ち着いて来ますので、焦っている時には見えなかったアイディアを見つけやすくなります。
コツとしてはスピードよりも停滞しないことを大事にして、文字をゆっくり丁寧に書いていくこと。
それなりに時間もかかると思うので、休憩しながら進めていきましょう。
思考が溢れてきて文字を書く速度にじれったさを感じるようであれば、その時はデジタルで出力しましょう。
第2位 挑戦すること
チューニングとは勝機を求めて戦略を練ることです。
勝機のない勝負に挑戦できないのは当然のこと。負け続けて苦手意識をこじらせてしまった状態から、再び挑戦するためにチューニングをするのです。
「挑戦」とは、頑張っても失敗に終わるかもしれないという「恐怖」を伴うレベルの勝負に挑むこと。
そんな「恐怖に挑む」ことができたのであれば、勝っても負けても絵とは無関係な挑戦だとしても得るものがあります。
「勝利」した場合
何かしら成功と呼べる成果を出したり目標を達成した場合。もしくは他者との競争に勝利した場合です。
勝利から学べる一番重要なことは、「勝利したとしても人生は大して変わらない事実」を知れることだと思います。
勝利の喜びは一時的なものですぐに勝利以前の状態に戻ります。
「この挑戦に成功したら今までの全てが報われる」みたいな未来像は、目標達成してみれば幻想に過ぎなかったと気づくことができるでしょう。
それによって「結果」への執着を軽減できるようになります。
物事が予定より遅れると焦りを抱くのは自然なことですけど、結果への執着の強さによってその後の流れが変わります。
Aを選ぶとスケジュールが詰まって負担増となり、焦りは消えません。
Bを選べるとスケジュールに余裕が生まれて負担減となり、焦りは消えます。
仕事では難しいかもしれませんけど、できる限りBを選ぶ努力をしていかないと人生が焦っているだけで終わってしまいます。
勝利することは至上の喜びであり、それが自信の源となります。
ビジネスであれば収入も増えるでしょうし、成功と呼べる結果が出せなければ先に進めません。
とは言え「勝利・成功すれば幸せになれる」というものではない事実を知り、結果に到達した時の「ご褒美」くらいに考えておけるほうが勝負そのものに集中しやすくなるでしょう。
「ご褒美」以上のものを「勝利・成功」に求めてしまえば、勝てたとしてもむなしさしか残りません。
でもまずは勝利しないことには何も知ることができないので、勝つために全力を尽くすのが第一ですね。
またチューニングにおいて勝利の経験は、「どうすれば勝ててるか」という戦略を練る上で貴重なサンプルになります。
「敗北」した場合
目標を達成できずに終わってしまったり、競争に敗れてしまった場合です。
敗北から得られるものは、戦略を練る力です。
能力と努力だけで勝ち続けられる人に戦略は不要。
でもそれだけでは勝てなかったからこそ、勝つためにチューニングによって戦略を構築する必要があると認識できるわけです。
負けた際に「運・調子が悪かっただけ」とか「〇〇が足りなかったから負けた」という言い訳が思いつくのであれば、その言い訳条件を満たした上でリベンジしましょう。
言い訳の中に勝つための方法がピンポイントで詰まっているのですから、それらを全て試すべきです。
言い訳は他人に語ったり、それで問題を放置してしまうのが悪いのであって、「言い訳を考える」こと自体は全然悪いことではありません。
普通に考えれば「失敗の改善策」そのものなのですから、有効利用したほうが賢いです。
言い訳とは、敗北後に見出す「最初の戦略」とも言えるでしょう。
それで勝てれば良し。
しかし全ての言い訳を使い切っても勝てず、言い訳のしようもなくなったとき、本当の意味で「負けを認める」ことが可能になります。
そこからがチューニングの本番です。
「負けを認める」とは「勝てない自分を認める」ことでもあります。
現実の自分に納得し「身の程を知る」こと。
それは勝利するのとは別のベクトルで自己承認することでもあります。
自分に「できること」と「できないこと」の区別が付くようになり、勝負するステージの変更を検討することも可能になります。
自分の身の程にステージの難易度を合わせることがチューニングなわけですから、「身の程を知る」ことは非常に大事です。
そこを計り間違えている限り、いつまでも報われない努力を続けてしまうでしょう。
敗北しても「挑戦する」場合
とは言え「負けを認める」ことは簡単ではないですし、そのダメージによって挑戦から遠ざかってしまうこともあると思います。
しかしだからこそ「挑戦する」ことの価値が高くなります。
多くの人は負け続ければ「才能がない」と判断して挑戦を諦めてしまうでしょう。そんな中、身の程を知った上でも再挑戦できるのは凄いことです。
「恐怖に挑む」ことができているだけで自分を認められる。
挑戦を続けているとそんな心境に至ることができます。
そして再挑戦するために必要なスキルがチューニングです。
自分に「できないこと」は諦めて手放し、「できること」を軸にして勝てるステージにピントを合わせていく。
もし、わずかでも勝機を見出すことができたなら、再び挑戦しないわけには行かなくなるでしょう。
第1位 (To be continue!)
申し訳ありません。
第1位は一番話が長くなってしまうので記事を分けることにします。
ここまで読んでいただきありがとうございました。
引き続き後編も読んでもらえると嬉しいです。
▲「描けないものは描けない」と認められる能力は絵が上手くなるためにも必要です。
負けられない世界で生きるアスリートの「諦め方」は、理想と実力のギャップを埋められない悩み解決のヒントになるでしょう。
(※Audibleに登録すればオーディオブック版を初回30日間は無料で聴けます。この機会にお試しあれ)
次の記事では「第1位のコツ」を解説しています。
コメント