自分には絵の才能がない・・・
という悩みは、絵の上達を望む人なら誰もが一度は抱いたことがあるはず。
これに対するネットからの一般解は、
「才能がなくても努力し続ければ絵は上手くなる!」です。
正直言って僕はこの回答が嫌いです。
言ってることは何も間違っていない正論なんですけど、
努力しても上手くなれないから悩んでんだろぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!
と思うからです。
結局「才能ないなら努力しろ」と言われてるだけなので、悩み解決に役立つヒントもなく、慰めにも気休めにもなりません。
しかし、岡田斗司夫さん(エヴァを生み出した㈱ガイナックスの初代社長)の本『プチクリ!』は違います。
この本から得られる別解「プチクリの才能を信じて表現し続ければ絵は上手くなる!」は、ちゃんと悩みを解決に導いてくれます。
才能の定義をアップデート
この本のタイトルである「プチクリ」とは「プチクリエイター」の略であり、意味としては次のようなものです。
創作活動を収益化できているか否かではなく、一番の目的がどちらなのかによる違いです。
プロであっても楽しさ重視で表現しているときはプチクリ。アマチュアであっても収益化が一番の目的ならプチクリではありません。
そして「自分には絵の才能がない・・・」という悩みにおける「才能」とは「プロクリの才能」のことです。
実際、マネタイズできる見込みもなく、他人から認められることもないのであれば、今のあなたに「プロクリの才能」はないのかもしれません。
そこに執着し続けていれば悩みが解消されることはなく、ずっと絵を描くのが苦しいままでしょう。
でも手放すことができたなら、あなたは「プチクリの才能」を手に入れることができます。
と言っても、カンタンに手放せたら苦労はしませんよね。
なのでまずは次の3つの質問に答えて、自分の「プチクリの才能」を見つけてから考えるとしましょう。
Q1)あなたが興味のないものはなんですか?
「興味のないもの=才能がないもの」です。
それの良さが分からないし心惹かれることもない。僕の場合は「酒」や「車」、「政治」、「スポーツ観戦」などが該当します。
根本的にそれらの良さを理解する能力が低いので、探求モチベーションも当然低い。
それらに興味があって自然に良さがわかってしまう人には、今後僕がどれだけ努力しても、知識もスキルも敵う気がしません。
だから最初から「才能がないもの」として選択肢から外してしまいましょう。
Q2)あなたが興味のあるものはなんですか?
Q1の定義が成立するならば、「興味のあるもの=才能があるもの」という定義も成立します。
興味があるということは、それの良さがわかるということ。「好き」と思えるのはその魅力をすでに知っているとういことです。
自分が興味のないもののことを考えればわかるとおり、「好きの壁」を越えられる者と越えられない者の差は圧倒的。
この努力不要のナチュラルアドバンテージこそが「才能」です。
なので一度、興味のあるもの、好きなものを一枚の用紙いっぱいに思いつく限り書き出してみましょう。
書き方は自由です。僕のようにマインドマップ形式(「僕の才能埋蔵マップ」の画像参照)でも、箇条書きや文章形式でも構いません。
ポイントはできるだけ好きな要素を具体的に書き出すこと。(絵が好き▶イラストレーターの〇〇みたいな絵が好き、〇〇のジャンルが好き、〇〇を描くのが好き、など)
これらを書き出した「才能埋蔵マップ」の中から、あなたのプチクリの才能を発掘していきます。
Q3)Q2の中で表現可能なものはなんですか?
才能埋蔵マップに書き出したものは紛れもなく「才能」ではありますけど、興味があるだけ、好きなだけでは「潜在的才能」の域を出ません。
この中で「表現できるもの=自分の好きの感情を他人に伝えられるもの」をマーカーで囲ってピックアップしてみてください。
その「表現の壁」をも越えられるものこそが「プチクリの才能」です。
「表現の壁」を越えられるかどうかが、ただのマニア・オタクとプチクリを分けるボーダーラインになります。
自分一人で楽しむだけでなく、他人にもその楽しさや魅力を伝えられるレベルのもの。
物語が好きでも自分では作れない僕から見れば、「なろう系サイト」などに小説投稿できる人は皆天才に思えます。
小説に限らず、イラストや料理、ブログ、SNS、ただの雑談でも、それで「好き」を表現できる能力はできない人から見れば完全にチートスキルです。
「好きの壁」を越えられるだけでも圧倒的なのに、さらに「表現の壁」を越えられる分野のアドバンテージとなれば・・・!!
それはもう「才能」と呼ぶことに何の抵抗もないでしょう。
「他者承認の壁」や「マネタイズの壁」を越えられないとしても、プチクリになるには十分な才能です。
でも「プロクリの才能」に執着していると「プチクリの才能」の価値を否定してしまうので手に入りません。
逆にその執着を手放せたなら、自動的に「プチクリの才能」が手に入ります。
手に入らない才能への執着を手放すだけで手に入る才能が目の前にあるのです。
サクッと手放して才能の定義をアップデートしてしまいましょう!
表現の定義をアップデート
「才能」だけでなく、「表現」についても一般的な定義ではハードルが高くなりがちです。
一般的な「表現」のイメージは、なんだか高尚なセンスやオリジナリティを発揮して作品を生み出す、といった感じのもの。
イラスト作成においても画力だけではない、見た人の心を動かす哲学や世界観、物語性などの深みがなければいけない気がする。
そんな漠然としたクソ高いハードルを無視して、プチクリでは次のように表現を定義します。
「これなら自分にもできそう」という気持ちになりませんか?
だって、好きと思えて表現もできる才能はすでに見つけられているのですから。
あとは好きなものを友人に「語る」だけでも表現の定義を満たせます。
つまり、表現とは単純に「のろける」だけで構わない。
表現の本質がわかってしまえば、無理して高尚なテーマや手法を選ぶ必要はありません。
自分が好きで、自分にも表現できるテーマや手法を選べば良いんです。
「でもそれになんの意味がある?」
そう思う人もいるかもしれませんけど、この疑問への回答はカンタンです。
あなたが絵を描きたいと思ったのも、他の人が表現した「好き」を受け取ったことがキッカケのはず。
そのあなたが自分の「好き」を絵にして別の誰かに伝えられるようになった。
それだけで十分すぎるほどに意味があります。
表現のコツ
表現をするコツは「好きを組み合わせること」です。
「絵で絵を表現する」なんてできません。
絵を描くスキルは絵以外の「好き」を表現してこそ真価を発揮します。
当たり前のことでありながら、絵の上達だけを目指していると「絵のために絵を描く」状態に陥りがちです。
「何のために絵を描くのか」を見失い、手段が目的になってしまう。
でも1章で作成した「才能埋蔵マップ」を使えば、見失った目的を再発見できます!
やり方は絵と他のプチクリの才能を組み合わせて、新しいコラボ表現を考えるだけ。
コラボ表現はそのまま「自分の好きを他人に伝える方法」になります。
僕の場合であれば、次のような組み合わせが考えられます。(1章Q2の画像参照)
絵にこだわらずに色々な組み合わせを考えてみると発想が柔軟になります。
そのほうが間接的に絵とのコラボ案も膨らませやすくなりますよ。
才能を使いこなすコツ
『プチクリ!』では、大事なのは才能のサイズではなく、その才能を「使いこなす力(=コントロール力)」だと語られています。
才能の引き出し方とは「表現」のことであり、表現力(=作品のクオリティ、アウトプット効率など)を数式化すると次のように表されます。
才能は努力でどうこうできるものではありませんけど、コントロール力なら努力で高められる。
コントロール力を磨く方法は、好きなものを表現し、作品を人に見せる。そしてその活動を続けることです。
それだけ聞くと「才能がなくても努力し続ければ絵は上手くなる」の一般解と同じ結論ですけど、本書ではちゃんと継続のコツも紹介されています。
継続のコツは「自分はプチクリだ」と自覚することです。
これまでのようにプロクリに「なりたい」と考えるワナビー(志望者)ではなく、プチクリ「である」と自覚してクリエイター(表現者)になってしまう。
すでにプチクリの才能はあるわけですから、「決意と自覚」さえできればプチクリエイターにはなれてしまいます。
クリエイターを決意したならば表現活動をスタートすることになり、自覚を保つためには継続が必要になります。
継続的に作品発表をしていないと「自分はプチクリだ」と信じられなくなってしまいますから。
なので自然と次の作品作りのため、日頃からアイディアを考えたり、ネタ探しを意識するようになります。
クリエイターを目指す努力ではなく、クリエイターであり続けるための努力をするようになる。
「自分には才能がない」と己を呪いながら努力し続けるワナビー。
「自分には才能がある」と己を祝福しながら努力し続けるプチクリ。
同じ「努力し続ける」でも、前提が違えば展開も行き着く先も全く別物になるでしょう。
まとめ
大前提として「自分には絵の才能がある」と信じる必要はありません。
そう宣言しようものなら、他人からも自分自身からも反発を食らうのは確実ですから。
だからまずは「プロクリの才能はない」と認めてしまう。
その上で「でもプチクリの才能はある」と信じる。それなら誰にも否定できないので信じやすいです。
信じたからといって、あなたの絵が急に上手くなったり自信が増したりするわけではありません。
ただもうこれからは「自分には絵の才能がない」と嘆く必要はなくなります。
あとがき
絵が上手くなる方法は「努力を続けること」以外にはありません。
でもそれは「才能がない」前提より、「才能がある」前提のほうが圧倒的に続けやすいし楽しみやすい。
そこで最後に、自分の才能を信じるコツをもう一つ紹介します。
それは「他人が好きなもの、表現できるもの」をリスペクトすることです。
今までは「自分が興味ないものは無価値」と思っていたかもしれません。
でも「あなたが興味のないものはなんですか?」の質問でも考えてもらったとおり、自分が興味ない分野では、それを好きと言える人との能力差は圧倒的です。
さらに表現までできるとなれば絶対に敵う気がしない。
そこにリスペクトの気持ちを抱けるなら、自分の才能埋蔵マップを見た人も同じ気持ちを抱く可能性があります。
別に皆から認められるクオリティの絵を描けなくても、マネタイズにつながらなくても、ただ好きなものを絵で描けるだけで十分スゴいと。
ただ好きと思えて、表現できる。
他人のそれをスゴいと思える気持ちが、自分の才能を信じる力になります。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
▲この本は「自分には絵の才能がない・・・」と悩む人の必読書ですね。
筆者以外の人の才能埋蔵マップも見れるので、「好きなだけでもすごいこと」だと実感を得やすくなると思います。
プチクリの才能をより深く理解するためにも、ぜひ本書も読んでみることをオススメします!
(※Kindle Unlimitedに登録すれば初回30日間は無料で読めます。この機会にお試しあれ)
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