前回の記事【絵のモチベーションを底上げする!イラストチューニングのコツTOP5(前編)】では第5位~第2位まで紹介しました。
あくまでも個人的な主観に基づくランキングではありますが、僕が苦手意識を克服する過程で最も効果があったものを第1位に選びました。
第1位 マイハウツー本を作ること
イラストチューニングの目的は絵の苦手意識を解消すること。
それはつまり「自分で自分の絵を認められるようになる」ことです。
絵に苦手意識を感じている人でも、過去を振り返れば「上手く描けた」と思える機会は何度もあったはず。
でもそれより遥かに多く「自分はやっぱり下手だな・・・」と思う機会があったからこそ、「絵が苦手」という認識でいるのだと思います。
その認識を変える方法は、「上手く描けた」と思える機会を増やすことです。
他人の評価はコントロールできないため、自分でそう思える回数を増やす。
それができれば「苦手」の認識は「得意」に変わっていくはずです。
そのための方法が「マイハウツー本作り」です。
マイハウツー本を作るメリット
主なメリットは次の3つです。
メリットその1:「上手さ」の再現性が確立される
こうして上手く描くためのポイントを言語化し、マイハウツーとして把握することができれば「上手く描けた」時の絵の再現性が上がります。
その結果「上手く描けた」と思える機会が増えるという理屈。
料理でも美味しく作れた時のレシピを記録しておけば、その味を再現することができるのと同じです。
メリットその2:「自分の実力」の基準が変わる
忙しくてしばらく絵を描いていなかったりすると、そのブランクの前より絵が下手になっている事があります。
恐らく絵に苦手意識が強く、自分の絵を認められずにいる人というのは、そういったブランク後などの「不調時」の絵を「自分の実力」と認識しているのではないかと思います。
たまに「上手く描けた」と思えることがあっても、その上手さに再現性がないから「自分の実力」と思えない。
ただの偶然の産物に過ぎないと考えてしまっているのではないでしょうか。
少しの期間描かずにいただけで上手さが失われてしまった、この下手な状態こそが「自分の実力」なのだと。
しかしブランク後の不調に陥っても、マイハウツー本の中に好調だった時の描き方をまとめておけば、いつでも確認して「好調時」の絵をまた描けるようになります。
こうして上手さの再現性を確立できると「好調時」の絵が「自分の実力」であり、一時的に下手になってしまった時の絵は、ブランクやストレス、体調不良などの「不調」によるものだと思えるようになっていくでしょう。
補足として、ブランク後に「好調時」の実力まで回復するために行う練習は「リハビリ」と呼ぶのがオススメです。
ちょっとした工夫ですけど、下手になった状況を単に「不調時」なのだと認識しやすくなります。
現代ではネットを開けばいくらでも他人のイラストハウツーを見つけることができます。
でもそれらを使いこなすのには時間がかかりますし、そもそも自分には合っていないかもしれません。
何より、大抵は使いこなせるようになっても技術が増えるだけで「絵が上手くなる」わけではない。
対して自分で過去に描いた絵の中から見出したハウツーであれば、既に使いこなして上手に描けている「自分の技術」なのですから、ポイントを思い出しさえすれば再現するのは難しくありません。
そして再現できれば「上手く描ける」ことを、あなたは知っているわけです。
メリットその3:「己を知り己に学ぶ」姿勢を作れる
マイハウツー本を作るという行為そのものにも意義があります。
この作業は「絵が上手く描けている好調時の自分」から上手く描くコツを学ぶ行為だからです。
客観的に見れば過去の自分を「絵が上手く描ける人」として扱っています。
この「自分の絵から学ぶ」姿勢は絵に苦手意識を持っている人にとって、プロのイラストレーターから描き方を学ぶよりも遥かに意義がある。
もちろん「他人の絵から学ぶ」姿勢も重要ではあります。それがなければ上達することはできませんから。
しかし絵に苦手意識を持っている人に最も欠けている大事なものは技術や画力ではなく、「自分で自分の絵を認める」力です。
他者からの否定以上の力でもって、自分の絵を肯定する力が欠けている。
自分の絵を肯定する力を磨くためには、意図的かつ継続的に自分の絵の良いところに目を向けていく必要があります。
なので過去作品をPCデスクトップの壁紙にしたり、紙出力して「マイ作品集」を作ったりすることも有効です。
そうやって色々試してきた中で、個人的に最も効果を実感できたのは「マイハウツー本」を作ったことでした。
なんせ自分の絵の良いところ、好きなところを集めたレシピ集ですから。
それを参考にして絵を描けば良いと思えるし好きにもなります。
そんな風に、絵を描いていて「いい感じじゃん」と思える機会を増やしていきましょう。
そのために必要なことは新しい技術を学び、より高い画力を獲得することではありません。
自分が「描けるもの・描けないもの」を知って絵のハードルをチューニングし、既に持っている上手く描くための「自分の技術」を学ぶことです。
【補足】マイハウツー本作りのポイント
最後に補足として、マイハウツー本を作る際のポイントをいくつか紹介します。
クリアポケットファイルで作るのがオススメ
普通のノートで作るのでも構わないですけど、随時更新が可能なクリアポケットファイルのほうがオススメです。
ちなみに僕はA4コピー用紙に描いたものをクリアポケットファイルにまとめています。
用紙が汚れにくく、更新しても古い用紙も一緒にまとめておけるのが便利。
ノートやルーズリーフだと裏写りが気になりますしね。
初回はこだわりすぎずに作る
図解をまとめるのにこだわりすぎると面倒くさくなってしまうので、初回は他人に見せない自分専用のものを作るのが良いと思います。
ただ一応「他人に教えるつもり」でまとめたほうが、後で見返す未来の自分にとってもわかりやすいハウツー本になります。
他人に伝わる形に表現できないものは、自身でもあまり理解できていないものですから。
それだと再現性も低くなります。
なので実行するかどうかは未定として、いつか更新版をブログやSNSで公開するつもりでまとめるのが良いでしょう。
チューニングしながら作る
料理の苦手な人が好む簡単手抜き系レシピのように、絵が苦手な人向けのハウツー本を目指しましょう。
以前書いた記事【絵のモチベーションを削る苦手意識のノイズ解消法】を参考にして、自身の絵の情報量が軽くなるよう意識しながらまとめていくのが良いです。
目次としてマインドマップを活用
図解する手前でコツをまとめたマインドマップは、マイハウツー本完成後に改めて整理しましょう。
自身のマイハウツーがどういう要素を軸にしているのかを体系的に把握でき、「自分の型」がわかってきます。
「自分の型」があると、今後新しい技術や知識を学んだ際に、それらの収まりドコロが明確になります。
「自分の型」のどの要素に関連する技術なのかを考え、継ぎ足していく感じです。
今まで散らかりっぱなしだった技術や知識がしっかり整理されてくると、努力の蓄積感を実感できるようになるでしょう。
作成したマインドマップは、マイハウツー本の内容を網羅した目次として活用しましょう。
手書きであればそのままファイルに入れればOK。
スマホアプリ版などのマインドマップで作成した場合は、マイハウツー検索用の別冊版として活用します。
軽く思い出したい時はアプリで確認し、詳しく知りたい時はそこからマイハウツー本の該当ページを見る、みたいな流れで使うと良いでしょう。
ちなみ僕は長年「iThoughts」を利用してます。(アンドロイド未対応)
随時更新していく
このマイハウツー本の中に、自分の「人前で描けるもの」を少しずつストックしていきましょう。
最初は少ないかもしれないですけど、そこからちょっとずつ増やしていくことで視覚的に成長を実感できます。
新たに上手く描くコツを見つけたらガンガン追記していきましょう。
内容がごちゃ付いてきたら用紙を更新して改めて整理します。
更新するたびに「自分の実力」のデフォルト値も更新されていきます。
あとがき
最後にイラストチューニングのコツをまとめると、
健康的な習慣でメンタルを安定させ、
オリジナルキャラを作って比較耐性を上げて、
書きながら考えることで堂々巡りを回避しつつ、
マイハウツー本で自分の上手さの基準を作る。
そして再び、敗北を乗り越えて挑戦すること。
とまあ色々とコツを挙げて来ましたけど、とりあえずはマイハウツー本を作ってみるのがオススメです。
「己を知り己に学ぶ」という姿勢を覚えることで、絵に対する認識は大きく変わります。
過去の自分から学ぶことができたなら、未来で不調に陥っている自分に「どうしたら絵を上手く描けるのか」を教えてあげましょう。
前編・後編で長くなってしまいましたけど、最後まで読んでいただきありがとうございました。
▲僕が実際にマイハウツー本作りに使っているクリアポケットファイルです。
他商品に比べて薄いのに容量が多く、さらに後からポケット追加もできるスグレモノ!
次の記事では、マイハウツー本を作るより以前に僕の絵の常識にパラダイムシフトを起こした「下描き不要論」を紹介しています。
コメント