アタリも下書きもなしでイラストを一発描きしてる人を見ると憧れますよね。
あんな風に自由に絵を描けたら楽しいだろうなと思う。
そう思って僕も下書きなしのペン画イラストに挑戦したことがあります。
棒立ちキャラならなんとか描けるようになったけど・・・
ちょっと動きをつけるとすぐ人体バランス崩れるし、試し書きなしで背景描くとか不可能じゃね・・・?
そもそも1ミスでゲームオーバーって無理ゲーすぎる!
でもこれらの難題を乗り越えられず挫折・・・
しかしそこから約1年後、改めて下書きなしペン画にリベンジしてようやく難題の突破口を見出せました!
最大の問題は、描き始める前の「計画」にあったのです!
下書き卒業のスタート地点
まずは難題と向き合う前に、下書き卒業を目指すことについて改めてフリダシから考えてみましょう。
下書き卒業のゴールは「修正なしで絵を描くのに慣れること」。
鉛筆やシャープペンであっても、やろうと思えば下書きせずに一発描きができます。
しかしここで言う「下書き」とはアタリやパースなどの補助線に限ったものではなく、「修正ありきで描かれた絵」のことだと考えます。
なので「ミスしても修正すれば良い」と思って描かれた絵は、たとえ補助線を使っていなかったとしても下書きです。
対して、ペン画は修正できません。
一度引いてしまった線は「なかったこと」にはできないのです。すると必然的に下書きとは異なる意識で線を引くことになります。
下書き後のペン入れ、清書に近いかもしれませんけど、なぞるべき下書きがないため感覚は別物です。
必然的に集中し、ゆっくり丁寧に描くことを要求される。
僕はその感覚を磨くことが下書き卒業につながる道だと考えます。
だからもし下書き卒業を目指すなら第一歩目は、あえて消しゴムで消せないペンを選択し、修正を封印することです。
最初は修正できないことが怖いですけど、怖いと感じるのがスタート地点であり、「修正できないことに慣れた」と素直に思えたら下書き卒業のゴールなのだと考えれば問題にはなりません。
ペン画に使用するペンとして考えられるのは、ボールペン、万年筆、Gペン、ミリペン、筆ペンなどが考えられます。(フリクションのように消せてしまうインクのペンはNG)
これらを実際に使ってみて、使いやすいと思ったものを選べば良いでしょう。
ちなみに前回の記事で紹介した「下書き不要論」の開拓者、松村上久郎さんは万年筆を使っています。
だから僕も最初は彼と同じ万年筆を購入してペン画を始めたのですけど、耐水性がなくてにじみやすいインクに馴染む事ができず、使いこなせませんでした。
今はピグマのミリペンを使用しています。
耐水性があってインクも長持ち。それでいてペン先が乾きにくく、かすれずに線を引けるので使いやすいです。
これからペン画を始めてみたいという人は一度使ってみることをオススメします。
修正できない難題を攻略する方法
ペン画最初の難題は「修正できないこと」です。
修正できないのだからミスったらゲームオーバー。最初から描き直し。
でも「ミスしない」なんてことは人間には不可能です。どんなに集中したところでミスをゼロにするなんてできません。
「そんなのクリア不可能じゃん・・・」と思うかもしれませんけど、そういうゲームってたくさんありますよね?
スーパーマリオなどの横スクロールアクションゲームとか、シューティングゲームもミスったらゲームオーバーでやり直し。
なのでペン画に慣れる方法も基本は同じです。
トライアンドエラーを繰り返し、「いかにミスを減らすか」と「ミスした時にどう対処するか」の戦略を蓄積していくことで上達していけます。
そして僕がこれまでに身につけた対策は4つ。
ミスを減らす対策は「チューニング」、「描き順」、「丁寧」。
ミスした時の対策は「リカバリー」です。
このうちの「チューニング」こそが最初の難題の突破口を作り出すスキルになります。
計画のチューニング
「下書きなしで絵を描くなんて無理!」と感じる原因は、ゲームの難易度設定ミスです。
RPGで主人公はまだレベル10なのに、普通にレベル50のモンスターが出てくる超ハードモードに設定しているようなもの。
そりゃあ先に進むことなんてできません。
「スケール感のある美しい背景付きのエモ可愛い美少女イラスト」が描きたいのはとても良くわかります。
しかしその理想像こそがゲームのラスボスなのです。
レベル上げが十分じゃないのにいきなりラスボスに挑めば当然負けます。それこそ手も足も出ない圧倒的敗北。
そして「自分には才能がない」と心折られる。
僕が前回下書き卒業を目指して挫折した状況を振り返ると、まさにそんな感じでした。
でもそれは「描けないものは描けない」という、ただそれだけの当たり前すぎる世界の原則です。
失敗の最大の原因は、スタートする以前の「計画」が失敗していることにあります。
最初から非常にハードルが高かったり、そもそも達成不可能な理想のゴールを目指している。
それじゃ失敗することがあらかじめ決まっているようなものです。求められるレベルが高すぎて、どんな小さなミスも許容されなくなってしまいます。
ならば「計画=描こうとしている絵」を適切にチューニングできれば、下書き卒業にもクリア余地が出てくるはずです。
理想を諦めて「捨てる」必要はありません。
ただ今の自分の実力で表現できない理想は、一旦手放して未来に「先送り」するだけ。
そして、今よりレベルが上がった未来で再び理想に挑めばいいのです。
この「先送り」をチューニングの基本として、さらに僕がペン画のハードルを下げるのに特に有効と思う方法、「デフォルメ」と「ジョブ分け」の2つを紹介します。
それ以外に過去記事【絵のモチベーションを削る苦手意識のノイズ解消法】で紹介している方法なども参考として、自分に適した戦略を構築していってください。
「デフォルメ」で難易度設定を切り替える
ペン画に限らず「イラストを描く」というゲームの難易度は、ゲーム開始前に次の選択肢から決定されます。
マンガなどで一般的なのは「リアル調」のキャラクターです。
リアル調のキャラクターを一発描きしようとすると当然難しい。
しかし、同じキャラクターを2~3頭身の「デフォルメ調」にしてしまったらどうでしょう?
多分ミスを恐れることなく一発描きできてしまうのではないでしょうか。
これが計画をチューニングすることでミスを減らせる仕組みです。
計画を改め、「描こうとしている絵」のハードルを下げるとミスの判断基準が変化するのです。
リアル調とデフォルメ調とでは、求められる「絵のルール」が別物と思えるくらい違います。
リアル調では手だけでもかなり細かいルールを意識しなければいけません。
手をちゃんと描ける様になるだけでも相当な練習を必要とするでしょう。
対するデフォルメ調の手は、ヒトデの様なトゲトゲで十分ですし、指の本数も正しくなくて大丈夫です。
最悪指がなくても全然許されます。ヒトデハンドを描くために練習なんていりません。
このデフォルメ調のゆるさは他の全ての人体パーツにも共通することで、キャラクターを描く難易度がリアル調とは別次元です。
リアル調では指の本数、長さが間違っていれば当然ミスとなります。
顔のパーツなんて、ほんのちょっとずれるだけで違和感が溢れ出してしまう。
しかしデフォルメ調ではミスにカウントされないのです。
顔パーツのズレも、デフォルメ度合いよって違いはあれどかなりの範囲まで違和感なく許容されます。
さらにキャラクターをデフォルメ調で描くことで、絵全体、周囲の背景もデフォルメされることが許される。
スタート時の選択肢一つでゲーム全体の「ミスの許容値」が上がり、「ミスを減らす」ことにつながるわけです。
最初のうちは「リアル調のイラストをペン画で描きたい」という理想も、未来に先送りしてしまいましょう。
「ジョブ分け」で課題を小分けにする
もう1つの有効なチューニングは「課題を小分けにすること」です。
ひとまとめワンセットになっていると攻略不可能な難題でも、分割して小分けにしてしまえば一つ一つの難易度は小さくなります。
理想像の先送りとデフォルメだけではまだまだ難易度は高い。
さらに「計画(=描こうとしている絵)」を小分けにして、ようやくクリア見込みのある難易度にまでチューニングできます。
まず、「イラストを描く」ために必要な能力を分割します。
細かく分けようと思えばいくらでも細かい要素に分類できますけど、とりあえずペン画イラストの構成要素を「キャラクター、模様、背景、物語」の4種類に分割してみます。
次に、それぞれをRPGのキャラクタージョブとして捉えます。
「イラストを描く」というゲームを、「各ジョブのキャラクターを育ててパーティを組み、力を合わせて挑むもの」だとイメージしてみてください。
【イラストジョブ】
・人形使い :人形を操り、キャラクターを生み出す能力
・模様使い :形を操り、ペン画に彩りを与える能力
・ジオラマ師:空間を操り、背景を構築する能力
・語り部 :設定を操り、物語性やメッセージ性を付与する能力
こうイメージすることで、背景が描けなかったり物語を作れなかったとしても、「自分は絵を描くための想像力、才能が欠落している・・・」と卑下する必要がなくなります。
人物さえ描けるのなら「自分のパーティでは、”ジオラマ師”と”語り部”のレベルはザコだけど、”人形使い”はまあまあ」と認識できるようになるからです。
小分けにした自分の能力にジョブという称号を与えることで、「描けないもの」にばかりフォーカスしていた意識が、「描けるもの」を見つけやすくなります。
「描けるもの」の少ないジョブも単に「レベルが低いだけ」、と捉えることで存在を認知できるようになる。
「クソザコ」であっても「欠落」しているわけではないのだと認識が変化するのです。
そして何より課題を小分けにしやすくなります。
ペン画のフリダシ段階では、「模様、背景、物語」は一旦先送りしてしまいましょう。
また「キャラクター」の中でも「人物」に集中し、自分が今プレイしているゲームは「人形使い」のステージなんだと認識する。
「人形使い」のクエストであれば背景は不要です。
とにかく人物をペン画一発描きできるようになるのがクリア条件。
そう割り切ることができたなら、「下書きなしで絵を描くなんて無理!」という嘆きは解消されているはずです。
下書き卒業戦略
下書き卒業までに乗り越えるべき難題は3つ。
1つ目は、単純に修正できないこと。
2つ目は、アタリなしでは動きのあるキャラの人体バランスが崩れやすいこと。
3つ目は、試し書きなしではミスが怖くて背景を展開できないこと。
同時にまとめて攻略しようとしたら「クリア不可能な無理ゲー」ですけど、ここまで解説してきた「計画のチューニング」を行えば突破口を見出せます。
「でもこれって単なる問題の先送りでは?」
と思うかもしれませんけど、実はそのとおりです(笑)
でもこれが一番の攻略法。
今の実力ではどうにもならない問題を未来に先送りして、どうにかなりそうな問題に集中すること。
焦って「最短クリア」を目指しても、それは自らゲームの難易度を上げて全く面白くないクソゲーを生み出すだけ。
それよりも普通に長い道のりを余計に寄り道しつつ、地道にレベル上げしながら進む方がゲームを楽しめるはずです。
レベル10にはレベル10が対峙すべき課題があります。
「描けないものは描けない」
そう割り切れた時、突破口は開きます。
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あとがき
ちなみに、現在の僕のパーティは、「ジオラマ師」がザコ、「語り部」はクソザコです。
それでも「人形使い」、「模様使い」のレベルアップにより、ペン画の背景にも何とか挑戦できるようになってきました。
まだ「背景」を攻略できたわけではありませんが、その攻略の取っかかり部分までを「下書き不要論」の中でまとめる予定です。
いつか「物語」にも突破口を見出して、ブログで紹介できるようになりたいものです。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
▲リアルキャラは一旦先送り!まずはデフォルメキャラでレベルを上げましょう!
次の記事ではチューニング以外でミスを減らす対策の一つ、「描き順」を解説しています。
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