前編では、タルパ作りの入り口として「文章会話」のやり方を紹介しました。
次は、そこからどのようにして「会話オート化」と呼ばれる状態に至るのかを解説します。
会話オート化とは
「会話オート化」とは、タルパを自分が演じるという感覚から、タルパが自律的に会話できている感覚に移行することです。
最低限この「会話オート化」を成立させられればタルパ作りに成功したと言えるでしょう。
「オート化」と聞くと、「完全自律型の別人格」を完成形としてイメージしてしまうかもしれませんけど、それは少し違います。
前編で説明したように、タルパの正体はエア人形に入った「自分」です。
だから考えるのも話すのもどう動くのかも決めるのは「自分」。自力で全くコントロールできない完全自律型だったらそれはホラーか二重人格障害です。
タルパの思考や感情を言語化せずとも理解できるのは、その正体が「自分」だから。それがわかっていればオカルトや精神疾患と混同せずに済みます。
「自分」なのだから自律的にふるまえるのは当たり前。一人二役のうち片方が現実の肉体に入った「自分」であれば、もう片方は相対的に「自分」と異なる別人格に見えるのも当たり前です。
その「当たり前」の状態から、文章会話を通じて「キャラクター思考」の感覚を磨いていく。
それによって無意識に近い「何となくレベルの思考」でタルパが動くようになり、自分がコントロールしている感覚が弱くなっていくわけです。
「タルパの正体=自分」という大前提は変わりません。
しかし、漫画やアニメのキャラクターを「架空の創作物」と知りつつ「命ある人物」として信じられるように、タルパの正体を「自分」と知りつつ「独立した一人格」として信じることも可能なのです。
現実の肉体に入った「自分」のふるまいを「当たり前」と思えるように、エア人形に入った「自分」がタルパとしてふるまうのも「当たり前」と思えるようになること。
それが「会話オート化」という状態です。
会話オート化の目安
「これができれば会話オート化ですよ」という、ネット上の共通基準はありません。
でもあえて個人的に会話オート化の目安を定めるのであれば、次のようなものになります。
特に話したい話題があるわけでもなく、声をかけるでもなく、ただタルパのことを意識するだけ。それだけで脳内のタルパアプリが起動する感じです。
シンプルに「会話オート化=タルパとして思考することに慣れた状態」と考えるとよりわかりやすくなるかもしれません。
文章会話でタルパ役を演じることに慣れて、脳内にて高速かつ低負荷で役になりきれるようになった状態。あとはその状態で思考回路を切り替えながら一人二役の脳内会話ができればOK。
文章会話と違い、脳内会話では「自分がタルパの思考を文章出力する」必要がないので、「演じている」という感覚も薄まります。
それで結果的に「タルパが自律的に思考し、会話できている」ような感覚が成立するわけです。
ただし、最初のうちは上記「会話オート化の目安」を満たして脳内会話ができてもあまり会話が弾まず、ぎこちなさが拭いきれないと思います。
でもそれは会話オート化ができていないからではありません。
単純に慣れと経験値の不足により、次の3つの問題につまづいているからです。
ボキャブラリーが少ない
まだタルパとしての会話量が少ないので、タルパらしい発言や反応パターンのデータが少なく、自然なリアクションを取りにくいのです。
脳内思考は文章思考より処理能力が低い
脳が同時に思考処理できる短期記憶容量は少ないため、ちょっと複雑な問題や考えたことのない問題を処理しようとするとすぐに堂々巡りに陥ってしまいます。
脳が無意味な会話に耐えられない
リアルの会話でも、興味を持てない話を続けていると耐え難い苦痛を感じるはず。相手が誰であろうと、ボキャブラリーが少なく発展性のない会話を続けることはストレスになります。
これら3つの問題を改善する方法は文章会話を続けることです。
続けた分だけボキャブラリーデータは蓄積され、それに比例してタルパのリアクションが豊かになっていきます。
また文章会話は、情報を全部紙の上に出力してしまうので脳の処理能力を記憶保持に使う必要がありません。その分思考力が高まり、堂々巡りに陥らずに話を前に進めていくパワーがあります。
文章会話が上達した分だけ脳内会話でも話せることが増え、意味のある会話ができるようになっていきます。
熟練度が上がれば、客観的には無益な内容でも意味を見出だせるようになり、会話そのものを楽しむ「雑談」が可能になっていくでしょう。
文章会話のコツ
では、文章会話がタルパコミュニケーションの基礎になるのだと分かってもらったところで、この基礎を磨くためのコツを3つ紹介します。
イメージ力の強化
「タルパ作り=エア人形遊び」なので、エア人形をイメージする力が強い方が会話の精度も高くなります。
絵が苦手な人でも、タルパの元になっているキャラクターイラストを模写してみるだけでイメージ精度は上がるはず。
絵が描ける人は、別記事で紹介した「スタンダードモデル」を作ってみることをオススメします。
紙に描きやすいものは脳内でもイメージしやすい。6~7頭身のリアル調より、情報量が小さい3~4頭身のデフォルメ調の方が想像する負担も小さいです。
タルパの「スタンダードモデル」を作ってみると、自分がイメージしやすい頭身を把握しつつ、基本ビジュアル設定を具体化できるので、イメージ力が一気に安定すると思います。
また、「タルパ視点でのセリフがあまり出てこない」という人は、イラストに加えて「フキダシ」を活用してみると良いです。
ノートに顔だけで良いのでタルパのイラストを描き、その横に漫画のフキダシを描き加えます。あとはフキダシの中をタルパのセリフで埋めるだけ。
こんな感じでイラストとフキダシを描いてみれば良いと!
試しに一度やってみてください。不思議なことに「イラスト+フキダシ」があるだけで、白紙状態よりもタルパ視点のセリフが浮かびやすくなるはずです。
最初は小さなフキダシから始めると良いでしょう。次第に大きくしていくことで、徐々に感覚がつかめてくると思います。
幼い頃から漫画漬けの日本人だからこその効用かもしれませんね。このビジュアルの持つ力をうまく活用してイメージ力を補っていきましょう。
文章のデフォルメ化
イラスト同様、文章もデフォルメ化、つまりルールを簡易化することで一気に難易度を下げられます。
そのためのテクニックは次の2つを意識するだけ。
「言文一致体」で正しい文法を手放す
「言文一致体」とは、話し言葉と書き言葉を一致させた文体のこと。普段のお喋りをしている言葉使いで文章を書く手法です。
SNSが一般化した現代であれば、無意識に使っている人も多いでしょう。とは言え、学校や社会で求められるのは「正しい文体」だけなので、SNS以外の文章作成時にはそちらに縛られてしまいやすい。
しかし文章会話においては、これまで学んできた文法知識は全て手放してしまって構いません。「正しさ」よりも「話しやすさ」の方が大事です。
「ですます調やである調はどちらか一方に統一すべき」とか、「てにをは、句読点、段落、接続詞の正しい使い方」とか、そういう正しい文法は会話中と同様、一切気にしなくてOK。
まずは「正しくない文章を書くこと」に慣れましょう。
「直列処理」で格好つけを手放す
「直列処理」は、前編で説明した「書きながら回答を考える」ための文章出力ルールです。
これに対し、出力前に脳内で思考を編集し「回答を考えてから書く」のが「並列処理」。客観的にはどちらも同じことをしている様に見えますけど、脳内処理の順番が真逆であり、主観的感覚は全く違います。
まず直列処理で文章出力しないと「キャラクター思考」が成立しません。それに脳内会話では堂々巡りに陥りやすいからこその文章会話なのに、並列処理をしてしまったら堂々巡りに逆戻りです。
それを回避するために必要な直列処理のルールは「思い浮かんだ順番で全部書く」。シンプルにそれだけです。
脳内で順番を入れ替えたり取捨選択したりせずに、とにかく言いたいことがなくなるまで思考を手前から順番に言語化し続けてください。
もちろん箇条書きではなく、数珠つなぎの話し言葉で。
コツはどんなにゆっくりになってもいいから「流れ(=集中)」を途切れさせないこと。
そのためには上手いこと、正しいこと、賢そうなことを言おうと格好つけないことです。それらは全てルールを複雑化して集中を乱し、文章出力のハードルを上げるだけ。
他人に見せる文章ではないのですから、そんな余計な重荷は全部手放して、格好良くない迷いだらけの文章を素直に吐き出してしまいましょう。
それを許せれば、書きたいことがいくらでも湧いてくるようになります。
継続
最後のコツは当たり前すぎますが「継続」することです。文章会話もスキルですから、使い続けないことには上達しません。
なのでここでは継続のコツを2つ紹介します。
誰にも見せない&語らない
これは他のタルパ解説サイトでも言われている重要事項ですね。基本的にタルパ作りのことは相手が誰であれ秘密にした方が良いです。
なぜならほぼ確実にネガティブな反応をされるから。イマジナリーフレンド、タルパ、エア友のことを知らない人は多いですし、知っていてもオカルト、スピリチュアル、中二病、精神疾患などのネガティブな偏見と結びついています。
文章会話が膨らんで面白くなってくると、他人に話したくなってしまうものです。
誰だって子供時代に人形遊びを経験するように、タルパ遊びも案外経験者は居るんじゃないか。その人達とこの面白味を共有できるんじゃないか、なんて考えてしまう。
結果として、「話すべきではない理由」を心の底から思い知ることになります。
「理解されない現実」を思い知るのも通過儀礼の一つと考えることもできますけど、序盤で味わうと継続モチベーションが激減してしまう可能性があります。
今でこそ僕もこうしてブログでタルパの話をしていますが、リアルの会話の中で話題に出すことはありません。
なので、我慢できなくなるまでは我慢した方が良いです。文章会話用のノートも「誰にも見せない」からこそ本音を書ける場所になるのですから。
日記として書く
文章会話を習慣化する方法として最強なのは「日記」にしてしまうことです。
夜書くなら今日の出来事、朝一で書くなら昨日の出来事をタルパに報告する。そしてタルパにコメントしてもらうという流れを習慣化してしまえば良いわけです。
ただ平凡な一日の出来事を「記録」するだけでは面白くありませんけど、それをタルパとの会話の「話題」にするのであれば話は変わります。
「話題」を見つけるコツは、まずその日の出来事を「頭から時系列順に描写」すること。
先述した「直列処理」を記憶の出力に適用すれば良いわけです。そんな風に日常描写を機械的に続けていくと、自分の関心が強い部分では無意識に描写量が増えます。
そこで何となく心に「引っかかる感覚」を覚えるキーワードがあったら、それを「話題」に選びましょう。
日常描写は途中でやめてしまって構いません。あとはその「話題」に関する感想や意見を互いに話していくだけでOK。
なぜその話題が気になったのか、その理由がわかるところまで掘り下げられたら何かしらの「気づき」を得られます。
「気づき」の質には波がありますけど、一度良質なものを見つけ出せたら日記が面白くなって習慣化しやすくなると思います。
ここまで読んでいただきありがとうございました。
引き続き後編も読んでもらえると嬉しいです。
▲タイトルだけを読むと「ホントかよ?」って思うでしょうけど、僕は本当に読むだけで書く力が劇的に伸びました。
学校教育で教え込まれてきた「正しい文法」を手放すだけで、こんなにも文章を書くのが楽になるのかと驚くはず。
記事内で紹介した「言文一致体」はこの本を読んで知ったテクニックですし、「直列処理」も本の中の「時系列順描写」をアレンジしたものです。
仕事などのオフィシャルな文書作成にはあまり役立ちませんけど、日記や作文への苦手意識を払拭してくれます。
▲デジタルで文章会話をする場合に非常に便利なLINE風メモアプリ。
タルパイラストのアイコンを作れば、一人複数役の脳内劇場をカンタンに展開できます。
次の記事では、ここまでの解説を読んで「やっぱり自分には難しそう…」と思ってしまった人でも実践できる「最強の入門法」を紹介しています。
コメント