「自炊」とは、自力で本や書類をスキャンしてデータ化し、保管コストを軽くしたり電子書籍化して持ち運びを便利にしたりする行為です。
以前からこの方法を使って、10年以上蓄積し続けている過去のラクガキや日記をデータ化してしまった方が良いよな、と考えていました。
でもずっと先延ばしにし続けてきてしまった。最大の理由は「面倒くさかった」からです。
よく分からない自炊のやり方をイチから調べるのがとにかく面倒くさかった。
それがようやく、引越しするタイミングでスタートした断舎離の流れと勢いでスキャナをレンタルし、この自炊断捨離にも着手することができました。
実際やって分かったのは、やるべきことは次の4ステップだけ。
一番面倒だったのはやはり最初の3ステップの情報収集。そこさえわかりやすくまとめたサイトさえあれば、もっとハードルは低かっただろう。
もしあなたも同じように過去のラクガキ類をどうにかしたいと考えているのであれば、この記事を読んで「面倒の壁」を超えてもらえればと思います。
自炊断捨離のメリット
具体的なステップに入る前に、まずメリットを把握してモチベーションを上げておきましょう。
自炊断捨離のメリットは、「過去絵を残すメリットを損なうことなく、残すデメリットを解消できること」です。
まず、過去絵の保存についてネットで調べてみると、「残すべき派」と「捨てるべき派」の意見に分かれます。そして僕は圧倒的に残すべき派です。
過去絵を残すメリット
捨てるべき派の「過去に縛られていたら新しいものを生み出せない」、「前を見て生きろ」などの意見も一理あるとは思いますけど、これは好調時だから言えること。
スランプなどの不調時には過去の振り返りが必要です。絵を描くのを辞めてしまった人ならともかく、今後も描き続けるのであれば残しておかないと不調時に後悔すると思います。
自分の努力量を再認識できる
過去の自分が努力してきた事実と熱意を再認識することは、どんな言葉を聞くよりも励みになります。
自分の上達具合を確認できる
絵は他者比較より過去の自分と比較する方が大事。過去絵が残っていないと己の上達具合を実感するのが難しくなってしまいます。
昔のアイディアを再利用できる
アイディアが出てこない時などに過去絵からリメイク案を出せる。昔好きだったもの、描きたかったけど上手く描けなかったものを思い出すだけでもアイディアの素になります。
また、自分の描き方の癖や好みを把握して「自分の型」を作ることも、過去絵がないと難しいでしょう。
過去絵を残すデメリット
しかし、残しておくデメリットが存在するのも事実です。
保管コスト増
量が増えるほど場所を取る。引越し時の負担を増やす。だからと言って自宅ではない実家保管では有効活用できないのでメリットもほぼゼロになる。
検索コスト増
量が増えるほど引っ張り出す労力がデカくなり、目当ての過去絵も見つけにくくなる。結果として有効活用しにくくなる。
紛失リスク増
量が増えるほど管理が雑になるので紛失してしまう可能性が増す。災害時には持ち出せないので一気に全てを失うリスクあり。
これらのデメリットを無視していると、「ラクガキ類の蓄積」と「コスト・リスク増の精神的負担」が結びついてしまい、感覚レベルで描くことへの抵抗感が増してしまいます。
これらのデメリットは自炊断捨離であれば全て解決できます。
全てをデータ化してしまえば「保管・検索コスト」の問題は一気に解消されます。データを外付けハードディスクなどに保管しておけば、災害時に持ち出し可能になるので「紛失リスク」も解消。
それでいて前述したメリットはどれ1つとして損なわれません。結局中身を見なければどのメリットも得られないので、物理的に大量のノートの山を残しておく理由もないのです。
日本に住んでいれば自然災害は他人事ではありませんし、南海トラフ巨大地震は近い未来に必ず起こると言われています。
過去絵を「大事」だと思って残してきたなら尚の事、自炊断捨離をして一度精神的負担をリセットしてみてはいかがでしょうか。
それによって新しく絵を描く負担も少し軽くなると思います。
オススメの自炊方法
僕のオススメは「スキャナレンタルによる自力自炊」です。
色々と検討してみましたが、マンガや書籍の自炊と違って、過去のラクガキや日記を自炊する場合、しかも初めてとなれば選択肢はこれ一択だと判断しました。
理由は主に次のとおりです。
レンタル費用も決して安いわけではありませんけど、他の自炊方法と比較すると間違いなく一番安いです。
中身を見られたくないというのは個人差があるにしても、自炊したことがない人が仕様バラバラの大量ノートを代行依頼するのは不可能です。
仕様が統一されているマンガや一般書籍ならともかく、個人のノート類は一度自分で作業してみないとどんな設定が適切なのかわからないからです。
それにラクガキはノートだけではありません。コピー用紙やルーズリーフに描かれたものも多いでしょう。それらをとりあえずでスキャン代行してもらい、あとから自分で大量のデータを整理するとなると大変です。
整理は現物があったほうが圧倒的にしやすいので、手間はかかってしまうにしても自分でデータ整理をしながら自炊作業した方が良いでしょう。
しかし、これだけでは納得し難いと思いますので、参考として他の自炊方法との比較検討結果も紹介します。
△自力自炊(購入)
自炊に必要なスキャナや裁断機を、レンタルではなく自前で購入する方法です。当然費用はかかりますが、今後継続的に自炊をしていくつもりなのであれば選択肢としてありかもしれません。
しかし、「初めての自炊」から購入に踏み切るには結構高価です。なので初回はレンタルで使ってみて、そこで買う価値があるかを判断するのがベストだと思います。
ちなみに購入する場合、スキャナは自炊用としてメジャーな「ScanSnap」と、ネット上でオススメする人が多い「カールの裁断機」を選ぶのがスタンダードだと思うので、費用は5万以上かかります。
ちなみに、ScanSnapは旧型モデルでも現役でメインレンタル機器に並ぶ高性能なので、旧型を中古で探せばもっと費用を抑えられるかもしれません。
×自炊代行
前述したとおり、価格に関わらずラクガキ・日記類の自炊代行は現実的ではありません。
ただし、一度自力自炊を経験済みで、「他人に見られても構わない」、「オプションを統一して依頼可能」なのであれば、代行を選ぶのもありです。
また、マンガや書籍のみを自炊したい場合は初回からでもありだと思います。もちろんレンタルよりも単価は高くなりますけど、冊数が少なければ代行の方が安くできるでしょう。
多少高くついたとしても、時間と労力のコストを考えれば納得できます。著作権上の問題も、作者に許可をとった本だけを代行するとHPに明示している業者に頼めば大丈夫です。
×自炊スペース
店舗にノートや本を直接持ち込んで自炊作業ができるサービスです。
基本的に自力でスキャン作業をしなければならないのに、なぜか代行よりも単価が高い。
なので、都会住まいで近所に自炊スペースがあり、少数のラクガキ類を急ぎデータ化したい場合や、作者の許可が取れず代行不可になっている本を自炊したい場合でもなければ検討余地はないでしょう。
×非破壊自炊
一般的な自炊は本やノートの背表紙を裁断機でカットしなければなりません。しかし非破壊スキャンが可能なスキャナーやアプリを使えば、それが不要になります。
しかし、大量のラクガキ・日記類を断舎離するのが目的であれば「非破壊」のメリットは全くありません。
また、1ページずつ手でめくってスキャンしなければならないので普通よりも時間と労力がかかります。ノート1~2冊だけ、という場合でもなければ検討余地はないでしょう。
オススメのレンタル業者
僕のオススメは「スキャレン」です。
理由はとにかく「一番安い」こと。それに尽きます。
レンタル機材はどの業者も同等なので、選択基準は「値段」のみでほとんど決まってしまうでしょう。
今後変動してしまう可能性はありますが、この記事作成時点では「スキャレン」が価格面では優位です。
こちらも検索上位に出てくるレンタル業者との比較検討結果を紹介します。(わかりやすくするために価格のみで比較)
以上より、同条件で比較すると「スキャレン」が一番安い事がわかります。
明確に高い「レンティオ」や「DMMいろいろレンタル」は迷う余地がないとして、あまり価格差のない「プロジェクターレンタル屋さん」の情報については補足しておきます。
「スキャレン」の方が裁断機のグレードが高く、+500円するだけでスキャナを新型iX1500にグレードアップできます。スキャナ本体にタッチパネルモニターが搭載されるため、作業効率を上げるのであればこちらの方がオススメです。
ただし、本州・四国以外に在住の方には送料が発生するため、費用をより安く抑えたい場合は「プロジェクターレンタル屋さん」もありでしょう。
また、「プロジェクターレンタル屋さん」はレンタル日数を1日単位で選べるので、自炊作業に慣れた2回目移行であれば短期レンタルで安く済ますこともできます。
オススメのレンタルプラン
ここは目的によってオススメが変わります。基本的には次の二択。
スキャレンのレンタル日数は「7日間or30日間」の二択です。あとはスキャナと裁断機のグレードによって少し金額が変わる程度。
スキャナのグレードは+500円で新型を選べるので、不慣れな初回は使いやすい新型のプランが良いでしょう。
選択肢が少ない分、迷わなくて良いのが良いです。ちなみに僕はAプランを選びました。参考として僕の自炊条件をまとめてみます。
時間的余裕があればマンガや小説の自炊もしようと考えてましたけど、思ってた以上に時間がかかりました。なのでマンガは試しに2冊自炊しただけで今回は見送りました。
僕より冊数が多かったり、作業時間の確保が難しい方は時間的に余裕のあるBプランを選んだ方が良いかもしれません。
また、スキャンできる用紙サイズは基本A4までですけど、「A3キャリアシート」をオプションで追加すれば、最大A3まで読み取り可能になります。
大きめの絵がある人は追加しておくと良いかもしれません。(+500円)
レンタル申込~自炊作業の流れ
最後にレンタル前に大まかな作業フローを見て、全体のイメージを掴んでいただければと思います。
1. レンタル申込
レンタルプランを選択し、スキャレンHPより申し込みます。
2. スキャン候補を一箇所にまとめておく
スキャン予定のラクガキ・日記類が分散している場合は、機材到着までにまとめておきましょう。
3. カッターボード、メタル定規、カッター用意
厚みが1センチ近くあるノートは、裁断前にばらして薄くする必要があるので必要な道具を百均などで揃えておきましょう。大型裁断機なら一発裁断も可能ですが、カットラインが斜めになってノート中央部の情報が欠けやすくなります。マンガ等の自炊には必須です。
4. 到着▶開封▶初期設定
レンタル機材が到着したらスキャナとPCを接続し、同梱されているマニュアルに従って初期設定をしましょう。必要なドライバなどは全てネットからダウンロードできます。
5. 裁断▶裁断チェック
裁断機でノート等を裁断し、全ページがバラバラになっていることをチェックしましょう。ScanSnapには重なり検知機能があるのでスキャン漏れはありませんが、くっついているページが残っていると紙詰まりが発生してしまいます。
また、ホチキスとじのノートは、ホチキスごとカットすると裁断機の刃こぼれにつながってしまうので裁断前にしっかり外しておきましょう。使用後に刃こぼれがひどい場合は、刃の交換代を請求されます。
6. スキャン
バラしたノートをスキャナにセットしてスキャンを開始します。細かい設定についてはやりながら調整していくことになると思いますが、やってみないとわからなかったポイントを2つ紹介します。
7. スキャンチェック&編集スキャン
設定の異なるデータは、読み取り直後は別データなので編集ソフト内で統合する必要があります。作業的にはドラッグ&ドロップをするだけなので統合するのは簡単。
バラしたノートは混ざるとわけがわからなくなってしまうので、一冊ごとに「統合▶正しくスキャンできたかザッとチェック」をした方が良いです。
また、このタイミングでノート作成の年代や連番をタイトルに付けて整理しておくと、後で検索がしやすくなります。
8. 5~7の繰り返し
あとは「裁断▶スキャン▶編集」を繰り返しながら、徐々に作業を効率化していくだけです。
僕が思う一番の効率化方法は「YouTubeの聞きながら作業をしないこと」。単純作業なのでどうしても動画などを再生しながら作業したくなってしまいますけど、明らかに集中力が下がるので小さなミスが増えて逆にストレスになります。
自炊作業のみに集中した方がフロー状態にも入りやすいので、圧倒的にスムーズです。過去のラクガキなどを振り返りながら作業していれば退屈も感じにくいでしょう。
9. データ整理
最後にデータをグループごとにフォルダ分けして、PC内や外付けハードディスクに保存すれば作業完了です。
スマホやタブレットでも閲覧可能にしたい場合は、もう一段階そのための処理作業が必要になります。でもそれはいつでも可能な作業なので、レンタル期間が終了してからゆっくりやれば良いでしょう。
10. 機材梱包&スキャン後ノート類まとめ
使い終わった機材を最初と同じようにダンボールに戻します。スキャン後のノート類は縛ってゴミ出しの準備をしておきましょう。
ちなみにマンガ・書籍類の自炊データを他人と共有するのは違法ですけど、裁断された自炊用マンガ・書籍類をメルカリ等で販売するのは合法です。
需要はあるようなので、マンガ・書籍類も合わせて大量に自炊した場合は、ゴミに出すより転売する方がお得でしょう。
11. クロネコヤマトに集荷依頼の電話
機材梱包が完了したらクロネコヤマトに電話して集荷依頼をします。ちなみに集荷は無料です。
12. 集荷完了▶後日資源ごみ処分
クロネコヤマトに集荷してもらえたらレンタル関連の作業は終了。あとは残ったノート類を資源ごみに出せば全ての作業は終了となります。お疲れさまでした。
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あとがき
実際に自炊断捨離をやってみて思ったのは、「想像以上に時間がかかる」ということ。自分でやってみたからこそ自炊代行のニーズがよくわかる。
それでもやっぱり過去のラクガキ・日記類の自炊は自分でやることに意義があると思います。それらのノートを裁断し、処分する権利と義務は自分だけが持っている。他人に任せるわけにはいきません。
だからまた数年後、ノートが蓄積してきて断捨離が必要になったとしたら、僕はまた自力自炊を選択するでしょう。
正直言って情報収集だけでなく、スキャン作業そのものも「面倒くさい」と思います。レンタル費用も時間も労力も決して安くない。
しかし「作業手間の重さ」は「過去の努力量の重さ」です。
過去の自分が努力した分だけ処分手間が大きくなってる。大して努力してなかったらもっと楽に終わっているはずです。
だからそこは面倒くさくても構わない。しっかり味わっておきましょう。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
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