初心者が絵の上達法をネット検索していると、多くのサイトが「上手くなるには楽しんで描くのが一番!」と言っています。
でも肝心の「絵を楽しむ方法」はいくら調べてもわからない。
上級者が「楽しもう!」と言っているのを見るたびに、楽しめない限り絵は上手くなれないのだとプレッシャーを感じるばかりでした。
上手くもなれないし褒められもしないし楽しめもしない。
なんのために私は絵を描いてるんだろう・・・
そんな絶望的な状態から僕を救ってくれたのは、「誰でも下書きなしで絵は描ける」という教えでした。
今回は僕のイラスト史上最大のパラダイムシフト「下書き不要論」を紹介します。
松村上久郎と下書き不要論
僕は学生時代、新卒入社した会社を退職した後のニート時代、ずっと絵の上達努力を続けていましたけど他人が認めてくれるほど上手くはなれませんでした。
その後公務員に再就職し、予想外のブラック環境にうろたえつつも入庁時に立てた目標「デジタルイラスト×100作」を3年半かけて達成しました。
結果として多少は上達したものの、思い描いていたレベルには全く届かず・・・。友人にも微妙な反応しかもらえませんでした。
でも何よりショックだったのは、絵を楽しむヒントが全く得られなかったことです。
それがキッカケで、絵を描くことが虚しさに飲まれてしまいました・・・
そしてある日「絵 楽しむ方法」などとキーワードを打ち込み、ぼんやりネット検索していた時のことです。
『下書きもパースも卒業できる!あなたが本当に知るべき”たったひとつのこと”』
そんなタイトルの個人出版電子書籍が目に留まりました。
僕は即ポチリました。
今まで見てきたどのイラストハウツーとも異なる切り口。
それまでのハウツーには自分が絵を楽しめるようになる可能性を見出だせない状態だったのもあり、この変わった着眼点にすがりついたのです。
本の作者は、松村上久郎というPNのイラストレーター兼マンガ家。
現在はペン画民VTuberとしても活躍されている方です。
下書き不要論の概要は次のようなものです。
しかしどういうわけか、小学校からは「下書き」を叩き込まれます。
「下書きをしなければ、絵は描けないのですよ」「下書きをした方が、思い通りの絵が描けますよ」と言わんばかりです。
別にそんなことをしなくても、今まで自由に絵を描けていたのに・・・
引用元:松村上久郎『下書きもパースも卒業できる!あなたが本当に知るべき「たったひとつのこと」』:p.8
彼の本をポチった結果、僕は再び絵を描く気力を回復できました。
今では下書きなしでもそれなりに絵が描けるようになり、前よりも絵が好きになれています。
「描くのが楽しい!」と思えるようになったわけではないですけど、あまりそこに悩まなくなりました。
理由としては、主に次の2つのメリットによって「描く苦しみ(=描く楽しくなさ)」が癒やされたからだと思います。
メリットその1:絵の負担軽減
大メリット1つ目は、絵を描く負担が大幅に軽減されたことです。
それまで「下書き▶修正▶清書▶修正▶完成」としていた工程が、「清書▶完成」となったわけなのだから当然です。
修正が簡単にできるデジタルイラストなどは、小さなミスに囚われすぎて修正に膨大な時間と労力を持っていかれていました。
それが「修正できない」という縛りによって、囚われようがなくなったわけです。
また最近はペン画のみで完成とし、デジタルでの着色もほとんどしていません。
その結果、以前と比べて「絵を描く」という行為に必要な時間や労力が圧倒的に小さくなり、気軽に描けるようになりました。
メリットその2:描いた絵に自信を持てるようになった
大メリット2つ目は、描いた絵に自信を持てるようになったことです。
それまでの僕は、自分で描き上げたデジタルイラストを「自分の実力」によるものだと信じることができませんでした。
それが上手く描けていればいるほど「どうして描けたんだろう?」と感じてしまい、もう一度描ける気がしないから。
でもそう感じる理由は簡単。
そのイラストを再現するには、描いた時と同じく下書きからスタートして修正に修正を重ねる必要があるからです。
あと参考にしたイラスト資料やデッサン人形。更に修正途中に得た偶然の閃きも必要です。
一度描けたんだから今後は紙とペンだけで描ける、なんて事にはならない。
下書きや参考資料で補強された画力も実力のうち。僕もそう頭ではわかっていても心では納得できず、どんなにデジタルイラストが上達しても自信を持つことができなかったのです。
この感覚は、版権キャラを模写して、それがどんなに上手く描けていても「自分の実力」だとは微塵も思えないことに似ています。
それに対し、下書きなしで一発描きできた絵は紙とペンだけで再現可能です。
だって最初に描いた時も紙とペンだけで描いたのですから。
長期のブランクなどがない限りは再現時に必要なものが増える理由がありません。
それに自分の中で再現方法が確立しているモチーフでなければ一発描きはできません。
曖昧にしか構造を理解できていないモチーフは下書きありなら描けても、ペン画一発描きでは「描けない」のです。
でもだからこそ「描けるものと描けないものの境界線」がはっきりするので、ペン画で描けたものは「自分の実力」だと信じやすい。
おかげで僕は絵の上達を志してから10年以上かかったものの、ようやく自分の絵に自信を持てる様になったわけです。
そのキッカケを与えてくれた松村さんには心から感謝申し上げます。
下書き卒業の障害
しかし実際のところ、僕は松村さんの本を読んだだけでは下書きを卒業できていません。
最初の本を読んだ後、彼が出している他の電子書籍、出版社から出している技術書、YouTube・pixivで公開されている彼のハウツー全てを参考にし、実践してみました。
でもやはり「下書きなしで絵を描ける」と思える境地には至れませんでした。
ペン画で一発描きをするスキルはそこそこ身に付いたものの、それで作品を描ける気がしなかったのです。
まず、アタリを取っていないためにキャラクターのバランスが崩れやすい。
直立ならまだしも、動きや角度が付くと途端に難しくなる。
それに、顔のパーツはちょっとずれるだけでキャラクターの可愛さが一瞬で死にます。
そういったミスを奇跡的に回避してキャラクターを描き上げられたとしても、周囲の空白を前にしてペンが止まる。
下書きなしでそのまま背景を描ける気がしないのです。
ミスればせっかく上手く描けたキャラが台無しになる。それが恐くて絵に広がりがなくなってしまう。
何とか「描ける範囲」で背景を描いてみても、ありきたりで退屈な絵になってしまいがち。
下書きありだったら試し描きをしながらしっくり来る背景や構図を模索できるし、後からモノを追加・削減することも簡単です。
そんな便利な下書きを封じてしまっては、広がりのある絵を描ける気がしないと思いました。
ミスらないようにと意識しながら描くのも負担で、筆が重くなってしまいます。
しかし松村さんのTwitterを見てみると、ファンの人が下書きなしのペン画で「松村さんの影響を受けて描いてみました!」と、すごく細かくて広がりのあるイラストを投稿しています。
しかも結構多くの人が。
単に上手い人の絵が目立っていただけだったのかもしれませんし、基本上手く描けたから投稿するわけですけど、「やっぱ才能なんかな・・・」と凹むには十分な光景でした。
その後仕事が忙しくなり、あまり絵を描く余裕もなくなってしまいました。
そこから再び突破口を見出だせたのは約一年後。
その突破口というのが、過去記事の中で紹介した「マイハウツー本作り」です。
マイハウツーを改めて整理していく中で「下書き卒業」の障害をどうすれば攻略できるかを考えたわけです。
一度は障害を越えられずに断念したわけですけど、やはり絵を楽しめるようになるためには「下書き不要論」が最も可能性を感じられるものでした。
だから今度こそ下書き卒業を目指し、リベンジするしかないと思ったのです。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
▲記事内で紹介した松村上久郎さんが絵の悩み解消法を90個も紹介してくれてます。
僕的に一番参考になったのは「大きな絵1つよりも、小さな絵をたくさん描こう」というアドバイスです。
デジタルイラストを描いてたときはどうしても「大きな絵」になってしまいがちでしたけど、このアドバイスによってアナログペン画にシフトしてからは「小さな絵」をよく描くようになりました。
これも絵を気楽に描けるようになった理由の1つですね。
次の記事では「下書き卒業」を目指す戦略と、障害の1つ「背景展開できない問題」の突破口について解説しています。
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